阪神・能見篤史はサイドスロー転向を本気で考えていた (2ページ目)

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 ピッチャーは、自分のフォームを極めていくタイプと、フォームを変えながら結果にこだわっていくタイプの2種類に分かれます。ほとんどの投手は前者に属すると思うのですが、能見は明らかに後者。

 WBCが終わり、ペナントレースの巨人戦で、阿部さんをスライダーで打ち取った後の能見の"ニヤリ"とした顔は忘れられません。阿部さんはその後、「スライダー使えよとか、余計なことを言わなきゃよかった」と苦笑いしていました。とにかく、相手を打ち取ることに全神経を集中させるのが能見の素晴らしいところです。

 それまでも、足の上げ方やフォームのリズムを微妙に変えたり、クイックを使ったりするなど、バッターの嫌がることを常に研究していました。普通に投げるだけではプロの世界では厳しいと思っていたのでしょう。そう思えることもすごいですが、それをやり切れる能見は本当に偉いと思います。

 そしてもうひとつ、能見のすごさを実感したのが、WBCの2次ラウンド、東京ドームで行なわれた台湾戦のことです。この試合に先発した能見は、3回に一死満塁から押し出しの四球を与え、降板してしまいました。結果的に見れば、押し出しの四球で1点を取られたわけですから、全然よくないのですが、能見の中では「最悪の事態は避けられた」という思いが強かったみたいなのです。

 満塁でカウントが悪くなったら、思い切ってストライクで勝負し、相手打者の打ち損じを願って投げる投手は意外と多くいます。しかし、能見はあの場面、平気で「四球でいい」と割り切っていました。国を背負った大事な試合で、よく割り切れたなと感心しました。

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