西武・高橋光成が「群馬の野生力」を取り戻し急成長中 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sportiva

 高校時代に高橋がフォームについて意識していたことは2つある。「一本足でしっかりと立つ」ことと、「左右の肩を素早く入れ替える」こと。この2つの意識も「まったく変わらないです」という。それでは、変わったのはフィジカルなのか?

「高校時代よりもトレーニングをやっていますし、あとは姿勢も意識しています。それが今、順調にきているのかなとは思います」

 体の成長に加えて精神的な要因を挙げるのは、前橋育英高の恩師である荒井直樹監督だ。

「甲子園で優勝した後の1年間は本当に苦しかったと思います。今まで誰からも注目されていなかったのが、いきなりどこに行っても写真は撮られる、人に囲まれるで......。もともとは沼田の田舎の子ですからね。高校3年最後の夏は、重圧から解放されてホッとしたように見えました」

 昨夏、群馬大会3回戦で健大高崎高に敗れた高橋は、実家のある群馬県沼田市に帰省した。甲子園に出られなかったとはいえ、18U日本代表に選ばれる可能性は高かった。そこで荒井監督が近況を確かめようと電話をするのだが、一向につながらない。夕方になってようやく、高橋から折り返しの電話が入った。

「すみません、いま川遊びをしていました」

 しかも、ただ川辺でパシャパシャとはしゃぐ微笑ましいものではなかった。モリで魚を突くような、本格的な「川遊び」だったという。荒井監督が言えることは、「お前......、溺れて死ぬなよ」ということくらいだった。

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