下剋上へ手応え。選手起用に見る日本ハムのチーム戦略
「バス、行っちゃった? いつも置いてくなぁ、オレのこと(笑)」
試合後の取材が長引くせいで、チームバスが待ってくれないファイターズの栗山英樹監督には、だからコーヒーをゆっくりとすする時間があった。第1戦に勝った 直後のコーヒーにはミルクをたっぷり入れていた。苦しみ抜いた挙げ句に勝ったこの日は、ミルクは入れなかった。指揮官としては、苦味を堪能したい......そんな気分だったのかもしれない。
オリックスとのCSファーストステージで攻守にわたりハツラツとしたプレイを見せた近藤健介
「苦しかったし、しんどかったけど、みんなが勝ちたくて、必死になってる姿が嬉しくて、こういう試合をすれば野球がうまくなるんだろうな、野球ってすげえなと 思いながらベンチで見てました。でも、それも勝ち切らないと効果が半減してしまうので、ホント、勝ってよかったなと思います」
ファイターズが4時間17分、延長10回の死闘の末、バファローズを2-1で下して、ファイナルステージに進出した。
ここ一番で頼りになったのは引退間際の稲葉篤紀の柔らかいバッティングであり、最後に決めたのは4番の中田翔のいかついバッティングだった。しかし、そこに至るまでには、栗山監督の育てた若い力がそこかしこに芽吹いていた。
たとえば、サードを守った近藤健介だ。
クライマックス・シリーズ、ファーストステージの第1戦。
バファローズは再三、バントの構えをするなどして、マウンドの大谷翔平を揺さぶろうとしていた。そんな大谷に試合中、近藤はこう声をかけた。
「正面の強いバントだけ、行けばいいから。三塁側はケアするから、いちいちマウンドを下りなくてもいいぞ」
大谷は試合後、こう話していた。
「(相手の揺さぶりについては)相当、感じてましたけど、近藤さんがケアすると言ってくれて......近藤さんだってキツいのに、全部(捕りに)いってくれて、すごく助かったなと思います」
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