後半戦のキーマン!? あの斎藤佑樹が戻ってきた (5ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Nikkan sports

 一軍復帰のあの日、試合前の練習を終えてベンチ裏へ引き上げる斎藤には、ファンからの声援に軽く手を挙げて会釈をする余裕があった。マウンドに上がったときも、涼しい顔に見えた。だから聞いてみた。本当に緊張していたのか、と――。

「緊張してましたよ。でも、その緊張って怖くてどうしようという緊張ではなくて、自分で集中して、あえて作りに行って、自分でコントロールしたつもりの緊張なので、不安はまったくなかったです。満員ですか? 全~然、へっちゃらでした(笑)」

 後半戦を3位で迎えるファイターズは、斎藤をローテーションの一角に加えてスタートするはずだ。もう目先にこだわって結果を出そうとする斎藤ではない。ストレートをストライクゾーンのインコースに投げるというピッチングの礎(いしずえ)はようやくできあがった。もちろん力を出し切っても、打たれる試合もあれば、抑える試合もある。その中で力になるのは、緊張をあえて作りにいけるという斎藤ならではの図太さだ。試合後の斎藤がこう言った。

「しっかり責任を果たして、こういうピッチングを続けていれば、いつか勝ちもついてくると思います」

 次の勝利は7百何十日ぶりだと騒がれるだろう。しかし、その後は勝つことも珍しくなくなる。今の斎藤には、一軍で戦うだけの心技体が、すべて揃っている。

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