3年前は専門学校生。広島・一岡竜司が実現したシンデレラストーリー (2ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • photo by Nikkan sports

 ヒーローインタビューでは「カープに来て、ちっかぱよかっちゃけど」と、故郷の福岡弁で「とても良かった」という言葉を使って、茶目っ気たっぷりに絶叫。3万人を超えるカープファンを喜ばせた。

 昨年まで所属していた巨人でも、一岡の直球の威力は「一軍クラス」と評価は高かった。入団直後からリリーフピッチャーとして育てられた。目標とするのは、「火の玉ストレート」と呼ばれる伸びのある直球を武器に日米通算222セーブを挙げている藤川球児(阪神→シカゴ・カブス)だった。

「藤川さんのような投手になることが目標です」と語っていた一岡はどん欲だった。目標の投手に近づくために、プロ1年目からチームの先輩捕手である中谷仁に頭を下げて、藤川のことを聞きに行った。中谷と1学年下の藤川は高校時代に選抜チームなどで一緒にプレイした経験があり、阪神でもバッテリーを組んでいた。中谷は「今、一岡が広島で活躍しているのを見てもまったく不思議じゃないです」と語る。

「巨人時代に選手、ブルペン捕手として2年間、一岡を見てきたのですが、ストレートのタイプで言えば、(藤川)球児はキレのあるボールを投げるタイプで、一岡は剛球タイプです」

 一岡は身長179センチあるが細身で、決して体は大きな方ではない。それでもパワーピッチャーが投げるボールの質だという。加えて、右打者の外角低めの直球のコントロールと、フォークの落ちも一級品。藤川と似ている点は「高めのストレートで空振り、三振が取れるところ」と中谷氏は語る。将来的にも、魅力があふれる投手である。

 その魅力が発揮されたのも、古巣・巨人との試合だった。4月8日の東京ドーム。1点リードの7回裏から先発・野村祐輔の後を受け、2番手で登板した。最初に対戦する打者はここまで2安打を放っていた坂本勇人だった。「難しい場面だったので、緊張しましたが、点を与えないように強い気持ちでいきました」とフルカウントの末、最後は伸びのある内角直球で見逃し三振に仕留めた。続く、開幕から好調だった橋本到をフォークで空振り三振。3人目の実松一成もフォークでサードゴロに仕留めて、完璧に抑え込んだ。ため息を吐いた巨人ファンは複雑な思いだったに違いない。

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