ドラフト5位も実力は本物。ロッテの4番・井上晴哉ができるまで (3ページ目)

  • 佐伯要●文 text by Saeki Kaname
  • photo by Nikkan sports

 それが、今では「アジャ」「パイの実」といったマスコミ受けするコメントを、朗らかに発するようになった。その理由を、井上は屈託のない笑顔で語った。

「マスコミ受けを意識しているわけではなく、自分を隠そうとせず、普通に話しているだけなんです。大学のときは変なプライドがあって、あまりいじらないでほしいと思っていました。でも、プライド高く閉じこもっているより、オープンにした方が楽だと気づいた。社会人でチームが大阪にあって、大阪のノリだった影響かもしれませんね。いじられた方がいいと思えるようになりました。だから、今では『ロッテのチョコが好き』って言えるんです」

 そんなに短期間で、性格は変わるものなのか。そう問うと、井上は真剣な表情で答えた。

「社会人で全部が変わったんです。この2年間は大きかった。すごくいい経験になりました」

 3月28日には、いよいよ2014年のシーズンが開幕する。

 それは、井上にとって、プロの世界で生き残るための競争の始まりでもある。一塁の守備ではハンドリングのうまさに定評があるが、一塁やDHはチームの柱であるベテラン・井口資仁やブラゼルら外国人選手と争わなければならないポジションだ。

「精一杯、やれることをやるだけです。打撃はもちろん、守備や走塁でもスキがないようにプレイしたい。スキがあると相手チームにつけこまれますが、普通にこなすことさえできれば、スキがないという印象を相手に与えることができますから」

 最後に今季の目標を聞くと、井上は即答した。

「まずは一軍で、ケガなくやっていきたい。先輩たちの後ろ姿を見て、しっかり学びたいですね。数字? とにかく食らいついていくだけです」

 今季のペナントレースでは、この井上がまだまだ注目を集めそうだ。もちろん、それは「野球の話題で……」である。

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