日本一を予感させる斎藤佑樹の復活と大谷翔平の覚醒 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 日刊スポーツ●写真 photo by Nikkan sports

 プロ4年目の斎藤佑樹。

 今シーズンの彼に求められているのは、6番手のスポットスターターとして1年間、ローテーションに穴が空かないようにすることだろう。右肩の関節唇損傷というダメージを喰らい、去年の今頃はボールを投げることもままならなかった斎藤にとって、それが目の前の厳しい現実である。しかし名護キャンプの2日目、 斎藤はブルペンで目を見張るようなボールを投げていた。右肩に過度な負担が掛からないよう、下半身をうまく使って体重移動をする。ギリギリまでバッターに球の出所を隠し、ポンと切り返して右腕を出す。思い通りに体が動き、キレのいいストレートがミットに収まる。時折、力みすぎて全体のバランスが崩れ、右肩に過度な負担がかかりそうで怖くなる瞬間もあったが、斎藤は満足そうにキャンプ最初のブルペンをこう振り返った。

「去年のこの時期はブルペンに入ることもできませんでした。それを考えればいいスタートが切れたと思います。すでに勝負は始まっていますし、開幕まで2カ月もないので、僕の中でやりたいことをすべてやって、試すべきことを試して、結果を求めてやっていきたい。(2月8日は)楽しみですけど、楽しみだけではいかない部分もあります。真剣に抑えにいかなければいけないし、そのチャンスを僕の中で消化できるようにしたいと思っています」

 キャンプ初日。

 斎藤の歩き方、走り方を見て驚いた。

 明らかに、足をどう着地させようかを意識しながら、どこかぎこちなく歩いている。そして走りながら、いちいち足の着き方を確かめているのだ。斎藤に確かめてみると、彼は「うまく使えていない筋肉を動かすためにそうしている」のだと言った。筋肉や関節のことを積極的に学び、さまざまなトレーニングを取り入れながら、理想として描くフォームを模索してきたこの1年。斎藤の意識の高さが改めて垣間見えた一瞬でもあった。

 さらにキャッチボールを見て、もっと驚いた。

 真横から見ていたら、右足への体重の乗せ方が変わっている。左足をまっすぐ上げて右足で立つのではなく、左足を少し右足とクロスさせるように内側に入れ、右の股関節の上に上体を乗せるような形で立っているのだ。その分、体重も右足に十分乗り、安定感も増していた。そこで溜めたパワーをロスさせないために右ヒザを少し曲げているのだが、これは高校時代、右ヒザを曲げていたのとはまったく理由が異なる。斎藤はこんなふうに言って、笑っていた。

「ホント、不思議です。理想を求めたら結局、高校時代の形に近づく。高校時代に戻そうとしたわけではなく、まったく違うアプローチから理想を求めたのに、結果的に同じような形になるんですから……高校時代の自分がどれほど本能だけでいい投げ方ができていたのか、ということになるんですかね(苦笑)」

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