2014.01.27

田中将大が知っておくべき「メジャー流のリード」

  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 プレイ面については、アメリカに行くからといって、何も変える必要はありません。マー君は現在、誰もが認める日本球界最高のピッチャー。いまの自分の投球がアメリカで通用するか、試したいと考えているはずです。仮にやられたら、それから考えればいいだけの話。メジャーでは、マー君のようにフォーシームを投げるピッチャーが少ないので、バッターが見慣れていないのはプラス材料です。特にマー君はスプリットがあるので、その分、フォーシームも効いてくると思います。

 ひとつだけ気にとめておいてほしいのは、アメリカでは、ピッチャーが配球をきちんと考えなければいけないということ。日本のキャッチャーはいろいろ考えてリードしてくれますが、メジャーでのキャッチャーの位置づけは"補助役"です。もちろん真剣に考えている選手もいますが、放っておくと、適当なリードになってしまう場合がある。アメリカでは「何でもシンプルにしよう」という傾向があるので、バッターの苦手なコースや球種で攻めるのではなく、ピッチャーの得意なボールを中心とした配球になりがちなのです。

 例えば、"精密機械"と言われたグレッグ・マダックスの右バッターに対する配球は、70%が外角へのシンカー。あとは何球目にチェンジアップを投げるか、組み立てが違うくらいです。左バッターなら逆に、内角のカッターでファールを打たせて、バックドア(外角のボールゾーンからストライクゾーンに変化させる球)でしとめる。そうしたピッチャーの特徴をキャッチャーがわかっているから、サインに首を振ることがほとんどないし、投球間の時間もかかりません。

 メジャー1年目のダルビッシュ有がサインに首を振る機会が多かったのは、自分の得意な球を選択するというより、バッターの嫌がる作戦を考えてマウンドに立つタイプだからなんです。アメリカのキャッチャーは日本人投手のそうした攻め方に慣れていないので、ダルビッシュの投げたいボールとサインが違っていたのです。でも、昨シーズンのダルビッシュはメジャー流のリードに慣れていき、首を振る回数が少なくなりました。

 ピッチャーにとって、自分で配球を考えることは間違いなくプラス。僕はヤクルト時代、古田敦也とバッテリーを組ませてもらい、楽をしていた部分がありました。配球はすべて古田に任せて、「自分は変なプレッシャーを受けずに、シンプルに投げるだけ」という感じでした。

 それがメジャーに行き、自分で配球を考えなければいけなくなった。初めは慣れることが必要でしたが、次第に楽しくなっていきました。自分で配球を考えると、集中力が高まり、特に変化球のコントロールがよくなります。そうして、ピッチャーとして成長できました。その代わりに日本球界に復帰後、キャッチャーとケンカするようになりましたけどね(笑)。