山﨑武司×中村剛也が語る「ホームランアーチストのプライド」 (3ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • 阿部卓功●写真 photo by Abe Takanori

―― 先程、山﨑さんから配球を読むという話が出ましたが、中村選手は相手投手の研究をしますか?

中村 あまりしませんね。いずれにせよプロの投手はどの球種も一流ですから。

山﨑 中村は感覚でやっているんだろうけど、誰にも真似できないのが抜けた高めの変化球を必ず捕らえること。普通、抜けた球がくると体が反応できずバットが止まってしまう。けど、中村は絶対に打つもんな。

中村 はい。抜けたら行こうと決めています。ポーンとボールが頭の付近にきたら変化球なので、とりあえず振る。で、当たるだろうだろうなと思いつつ、当たれば角度が勝手につくっていう感じなんです。

山﨑 簡単に言うけど並のバッターはそれができないんだよ。勝手に体が動くわけだから変化球のことを頭に入れておかなくていいのは楽だよな。あとはインサイドの真っ直ぐとフォークに気をつけて待っていればいいんだから。

中村 だから最近は全然カーブを投げてもらえません。

山﨑 そうだろう。ただ、中村もいずれ体力が落ちるだろうし、相手投手の配球を研究せざるを得ない日がくると思う。オレも若いときは本能でやってきたタイプだけど、歳をとって下降線になった時に野村監督に出会い、素直な気持ちで教えに耳を傾けることができたからもうひと花咲かすことができた。もし若いときに野村監督に会っていたら500本塁打(※)できたのかなって考えたりもするけど、たぶん衝突していたと思う(笑)。

※山﨑氏の現役通算は403本塁打だった。

中村 ハハハ。

山﨑 今後、500本塁打を打つような日本人選手は中村ぐらいしかいないんじゃないかな。今、通算で何本打っているの?

中村 238本です。

山﨑 中村は30歳だから、オレと同じ年まで現役を続ければ、あと15年ある(笑)。楽勝だな。ただ何度も言うけど絶対に力が落ちてくる日が来るから、その時はしっかり勉強すること。そうすれば大丈夫だよ。

中村 はい、わかりました。

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