山﨑武司×中村剛也が語る「ホームランアーチストのプライド」 (2ページ目)
山﨑 そういえば中村は、2008年からホームランを量産するようになったけど、何かきっかけはあったの?
中村 前年まで体の近くにポイントを置いて振る練習をしていたんですけど結果が出なかったんです。すると当時のコーチからポイントを前にして打ってみろと言われ、それがハマりました。あと渡辺(久信)監督から「打率は気にするな。ホームランだけを狙っていけばいい」と言われたのも大きかったですね。
山﨑 三振でもワンアウト、フェンス際で捕られてもワンアウト。監督によって三振を嫌がる人って多いんだよね。渡辺監督は例外だけど、とくにピッチャー出身の監督はそういう傾向が強い。オレにも経験があって野村監督は「三振OK」って感じだから精神的にすごく楽だった。ホント、ホームランバッターに「三振するな」なんて、野球を知ってんのかなって(笑)。そういう意味で中村は三振することを恐がっていないよね。ピッチャーの方からするとそう割り切られるとやりにくいと思うよ。
―― やはりホームランバッターになるには天性の資質が必要なのでしょうか。
山﨑 それは必要だと思います。ただ、さっきホームランを打つにはコツがあると言いましたが、元から備わっている人もいれば、あとから体得する人もいるんです。
中村 少年時代にどう野球に接していたかというのも大きいと思います。僕は伸び伸びというか、人よりも遠くに飛ばしたいと思いながら野球をやっていたので、その影響もあるのかなって思いますね。
山﨑 中村は遠くに飛ばす素質もあったし、さらにプロになってコツも覚えたタイプ。だから力を入れているように見えなくても、大きな放物線を描くホームランを打てる。オレから見れば松井(秀喜)は真のホームランバッターじゃないんだよね。彼の打球は、ラインドライブ系で大きな放物線を描かない。確かにすごい選手だし、打球のスピードも速かったけどラインドライブだからスタンドインしないことが多かった。現役だと中村の高校(大阪桐蔭)の後輩の中田翔も良いんだけど、まだ力に頼っているところがあってコツを掴み切れていない。
中村 中田には2013年のシーズン途中「今年は(本塁打王の)タイトルを獲っておけよ」と言っておいたんですけどね(※)。
※2013年、中田翔はシーズン後半のケガもあり28本塁打で2位。ホームラン王は31本で同僚のアブレイユが獲得した。
山﨑 ハハハ。そう言うってことは、まだまだ中田を相手にしていないってことだ。
中村 中田とはいずれホームラン王争いできたらいいですね。
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