ヤクルトファンの祈り。「バレンティンよ、55本を超えてくれ!」
8月27日、試合前の神宮球場。ヤクルトのウラディミール・バレンティンのホームランは48本を数え、王貞治、タフィ・ローズ、アレックス・カブレラの年間55本塁打記録まで、34試合を残してあと7本に迫っていた。そしてこの夜、バレンティンは49号、50号を連発。舞い上がる打球の美しさには夢があった。秋の気配が漂いはじめた神宮球場からはホームラン狂騒曲のイントロが確かに聞こえてきたのだった。
8月27日の中日戦で50号を放ったバレンティン。111試合目での50号到達はプロ野球史上最速となった
まずは神宮球場で集めた少しのアンケート結果。
―― バレンティンは56本を打つと思いますか!
はい30人 いいえ0人
―― 記録を前に怖いのは?
フォアボール22人 ケガ8人
―― 王貞治氏の記録を抜くことに抵抗感がある人が多いようですが?
気にしていない 27人 気になる人はいるかもしれないが、自分は気にしていない 3人
一野瀬正太郎さんは40年以上、「仕事は休んでもヤクルトの試合は欠かさない」ほどチームに忠誠心を持っている。
「本音は王さんの記録を抜いてほしい。でも記録を抜いては困るかな。だけどオレのヤクルトから記録が出るんだから、もう迷いはないぞ。バレンティンには56本を打ってほしい!」
―― やはり王さんの記録は守られなければならないとの思いがあるのですか。
「いや。王さんの記録を抜いたら年俸が高くなるでしょ。ぺタ(ぺタジーニ)じゃないけど、年俸払えなくなって巨人にとられるのが困る。そこがヤクルトファンの悩み」
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