吉井理人×田口壮「今のルーキーは僕らの新人時代と決定的に違う」 (4ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro

田口 とにかく、あそこまで体が崩れず柔らかく打てるバッターはなかなかいない。このまま順調に下半身を鍛えて体ができてきたら、間違いなくホームランバッターになると思います。

吉井 オレは、かつてブルージェイズやマリナーズで活躍したジョン・オルルドとダブってしまう。オルルドも入団当初は、大きな体をしていたので「ホームランを打て」と言われたらしいけど、「自分はホームランバッターじゃない」と言って拒否した。確かにホームランも打てるけど、巧打者のイメージが強い。首位打者も獲得しているし。それで大谷と話をした時、あまり大きいのは狙っていないというようなことを言っていたので、まさにオルルドやと(笑)。

田口 でも、大谷はホームランバッターになれますよ。

―― 高校を卒業して、いきなりプロの球を打つというのは、かなり難しいことだと思うのですが。

田口 神業でしょう。プロのピッチャーと対戦してまず驚くのが、スピード感と変化球のキレなんです。なかにはすぐに対応する選手もいますけど、ある程度、時間はかかります。特に、高校を卒業したばかりの選手ならもっと時間はかかるでしょう。高卒1年目から自分のバッティングをしていた選手となると……立浪(和義)ぐらいですか。

吉井 ああ、立浪はそうやね。

―― そう思うと、間違いなく何十年にひとりの逸材ということですよね。では、投手としてはどうでしょうか。

吉井 投手として見た場合、コンスタントに勝ち星を挙げられるようになるには、まだ修行期間がいると思いますね。ひとつ不安を挙げるとすれば、実戦での投げ込みがまだ足りないから、その場しのぎのピッチングをしているように見えてしまうこと。いつだったか、変化球ばかり投げていた試合があったけど、ああいうピッチングをしていると試合には勝つかもしれないけど、そこまでのピッチャーになってしまう気がする。今は打たれてもいいから、7割ぐらい真っすぐで勝負してほしい。

田口 体ができてきたら、どんな球を投げるんだろうという楽しみはあります。

吉井 栗山監督も「打たれてもいいと思っている」と言っていましたし、結果にこだわらず思い切り勝負してほしい。

―― 将来的に「投手で4番」というのは可能だと思いますか。

田口 うーん、プロの4番って本当にすごいんだけど、可能性はあると思います。

吉井 十分あるでしょう。ただ、1試合投げるとかなり筋肉に疲れが溜まるので、それをいかに回復させて試合に出るのか。

田口 1年で25~26試合先発して、バッターとして120試合ぐらいですかね。

吉井 それを思うとちょっとキツイかな。けど、見たい。やるならば今のうち。若いうちだけだろうね。

田口 そういうことを考えさせるだけでも、すごい選手ですよね。

(つづく)


  
吉井理人(よしい・まさと)
1965年4月20日、和歌山県出身。箕島高から84年にドラフト2位で近鉄に入団。近鉄時代は主にクローザーとして活躍し、88年に24セーブを挙げ最優秀救援投手に輝く。95年にヤクルトに移籍し、先発投手として3年連続2ケタをマーク。98年からメジャーに移籍し、メッツなど5年間メジャーでプレイし32勝を挙げた。その後、日本球界に復帰し、07年に現役を引退。08年から5年間、日本ハムの投手コーチを務めた。日米通算成績は121勝129敗62セーブ、防御率4.14。

  
田口壮(たぐち・そう)
1969年7月2日生まれ 兵庫県出身。西宮北高から関西学院大に進み、91年にドラフト1位でオリックスに入団。3年目の外野転向を機に才能が開花し、イチローらとともに12球団屈指の外野陣を形成。95、96年のリーグ連覇(96年は日本一)に貢献した。02年からメジャーに移籍し、カージナルス、フィリーズで世界一を経験。10年に日本球界に復帰したのち、12年7月31日をもって現役引退を表明した。日米通算成績は1894試合に出場し、1601安打、592打点、89本塁打。

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