「怒らせると怖いヤツ」。
ロッテ・唐川侑己の殺気に満ちたピッチング (2ページ目)
「カモン、唐川! 本気で腕振ってこい!」
それでもボールは変わらなかった。
「なんだ、これが成田の唐川のボールかぁ!」
そう言うと、唐川の顔色が変わった。一気に真っ赤になったのが、18.44メートル先でもはっきりわかった。
唐川が怒った。それからのボールはこれまでとまったく別物だった。
140キロは軽く出ていた。構えたミットをいったん下げてタイミングを取ったら、絶対に間に合わない。「これが唐川のボールだよ!」と言わんばかりの剛球だった。
見た感じはどうってことなさそうに思えるのだが、打席に立って対戦してみるとその球威にビックリ。プロの腕利きたちもそんな印象を抱いたはずだ。そして本気になった時のスイッチの入り方の凄まじさも、彼のピッチングを支えている大きな要素なのだ。
殺気――思わずその言葉が浮かんだのは、彼の高校最後の夏。千葉県大会を目前に控えた頃に行なわれた練習試合でのことだった。相手は菅野智之(現・巨人)擁する東海大相模高だった。
監督同士が親しく、頻繁に練習試合を行なっていた両校。当然、エース同士の対決が繰り返され、ふたりはライバルになっていた。
その日、試合前にグラウンドに着いた私は、すぐに唐川と目が合った。すでに、2度「受けて」いたので、すっかり親しくなっていた。いつもは「にっこり笑顔」でペコッと帽子をとるのに、無視するように顔をそむけた。その目は真っ赤に充血していた。
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