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【WBC】元阪神・矢野燿大が語る「4番・キャッチャー阿部の危険性」 (2ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva

 そう語る矢野氏は、今でも悔やみきれないシーンがある。それが北京五輪での準決勝の韓国戦、同点で迎えた8回裏の韓国の攻撃で、この回から登板した5番手の岩瀬仁紀が一死一塁から李承燁(イ・スンヨプ)に勝ち越しの本塁打を許した場面だ。

「李承燁を攻める時の基本はインコースの高めなんです。でもあの時、気持ちとしては高めでいいよと思いながらも、インコースにミットを構えただけで高めの指示は出さなかった。もし、岩瀬投手とずっと同じチームでやっていたなら、李承燁に対してはインコース高めとお互い認識していたと思うんです。合宿中から投手陣とは何度も食事に出掛けたりしましたが、それでも時間が足りなかった。バッテリーというのは、長い時間を掛けてようやくお互いのことをわかり合えるようになる。この限られた時間の中で、どれだけその差を埋めることができるのか。じつは、これがいちばん大変な作業でした」

 大会に入っても、可能な限り投手陣とコミュニケーションを図り、夜はデータルームにこもって相手チームの研究に勤(いそ)しんだという。矢野氏は「いかに点を取られないか。そのことばかりを考えていた」と、当時を振り返る。

「バッティングのことを考える余裕なんてなかったですし、自分が打てなくてもチームが勝って、点を取られなければOKでした。4番を任されている阿部選手とは状況が違うかもしれませんが、バッティングは開き直るしかないと思っていました」

 その一方で、打撃力のある阿部を一塁かDHに置き、キャッチャーに相川亮二、炭谷銀仁朗のどちらかを起用するという考えはないのだろうか。矢野氏の意見はこうだ。

「正捕手を代えるというのは、あまりにリスクが高い。おそらく合宿から阿部選手を中心に投手陣とコミュニケーションを取っていたと思うんです。チームが結成された段階で、正捕手は阿部選手でした。ここは最後まで貫くべきだと思いますね。阿部選手の場合、高い打撃力があるせいで、どうしてもバッティングの評価が中心となってしまいますが、投手のいいところを最大限引き出そうというのが見てとれる。投手からの信頼は相当厚いと聞きました」

 そう言って、こう続けた。

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