【プロ野球】何のための制度導入だったのか?育成選手の知られざる現実 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 佐賀章広●撮影 photo by Saga Akihiro

 2006年から導入されたこの制度は、育成選手から支配下選手となった巨人の山口鉄也、松本哲也が2年連続、新人王に輝いたことで世の中からもてはやされ、球界における市民権を得てしまった。一時避難所だったはずなのに、最終目的地だと勘違いされてしまったのだ。

 そもそも育成選手とは、日本プロフェッショナル野球協約に定められた規約に、「日本プロフェッショナル野球育成選手とは、日本プロフェッショナル野球組織の支配下選手として連盟選手権試合出場可能な支配下選手登録の目的達成を目指して野球技能の錬成向上およびマナー養成等の野球活動を行なうため、球団と野球育成選手契約を締結した選手をいう(文中一部略)」と記されている。つまり育成選手とは、さらなる技術とマナーを身につけなければ一軍の公式戦には出られない、プロのレベルに達していない選手だということになる。

 アマチュアから見れば、プロに見える。

 しかしプロから見れば、プロではない。

 アマ以上、プロ未満の彼らは、契約の際には契約金でなく、300万円の支度金が支払われる。契約期間は1月1日から12月末日で、最低参稼報酬は年額240万円。支配下選手と労働条件が違うため、日本プロ野球選手会には所属できない。もちろん一軍の公式戦への出場資格はない。

 そして、背番号は3ケタと決められている。当初は100番以降とされていたが、ある球団からの提案で"0××"も可となった。電話番号じゃあるまいし、こんな記号のような数字の羅列が背番号なのか。こんなことを言い出した人は、プロ野球選手という存在を欠片(かけら)も尊敬していないに違いない。

 なぜ育成選手は3ケタの背番号をつけなければならないのだろう。町で一番、学校で一番、地域でも一番。常に地元で知られていた野球少年が、ついに憧れていたプロ野球の選手になるというのに、背番号は3ケタ。正確に言えば、彼はプロ野球の選手になるのではなく、プロ野球の育成選手になるのだ。

「恥ずかしいと思うこともありました。基本的に育成は弱い立場なので......とにかくずっと、育成だから、育成だからって言われ続けるんです。『育成のヤツらはレポートを出せ』とか『育成は12月に入ってからも練習だからな』とか。支配下の選手は2月から11月までの契約ですけど、育成は1月から12月までなんで、12月に入っても育成練習は続きます。もちろん育成選手である以上、支配下になるために練習するのは当然で、オフもずっと練習するのはいいんですけど、でも、育成が弱い立場にあるのは間違いないと思います」

 そう言ったのは、元巨人の大立恭平だ。

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