【プロ野球】「新時代」の到来を予感させた、
20歳同士の息詰まる投手戦

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

日本シリーズ第4戦で好投したプロ3年目の中村勝日本シリーズ第4戦で好投したプロ3年目の中村勝 巨人の連勝でスタートした日本シリーズは、北海道に場所を移すと日本ハムが息を吹き返した。3戦目は稲葉篤紀の先制本塁打をはじめ、先発全員の12安打7得点の快勝。そして4戦目は0対0の延長12回、途中出場の飯山裕志のサヨナラ打で日本ハムが劇的勝利をおさめ、2勝2敗のタイに持ち込んだ。

 日本シリーズ史上、0対0での延長戦突入は1970年の巨人対ロッテのシリーズ初戦以来42年ぶり2度目。この息詰まる投手戦を演出したのは、間違いなく日本ハム・中村勝と巨人・宮國椋丞の両先発だった。宮國は1992年4月生まれの20歳。中村勝は1991年12月生まれでまもなく21歳になる。ともに平成生まれの投手が投げ合ったのは、日本シリーズ史上初のことでもあった。

 宮国は沖縄の糸満高校の出身で下級生の時からその柔らかくバランスの取れたフォームに抜群の身体能力を持つ右腕として注目されていた。2年春からエースを務め、3年夏には沖縄県大会決勝で島袋洋奨(中央大)の興南高校に敗れて甲子園出場こそなかったが、2学年上で沖縄尚学時代の3年春のセンバツで全国制覇を果たし、今年のドラフトでソフトバンクが交渉権を獲得した東浜巨(亜細亜大)以上の逸材として注目を集めていた。そして2010年にドラフト2位で巨人に指名され入団。1年目の昨年はファームで4試合に登板し、19イニングを無失点に抑える好投を見せた。今シーズンはキャンプから一軍に抜擢され、17試合に登板し6勝2敗、防御率1.86。中日とのクライマックス・シリーズ(CS)ファイナルの第3戦の先発も任された。

 一方、春日部共栄高校(埼玉)出身の中村は、今シーズンがプロ3年目。中村も甲子園出場経験がなく、全国区の選手ではなかったが、2009年のドラフトで花巻東高校の菊池雄星の外れ1位で日本ハムから指名を受けて入団した。1年目に1勝したが、2年目は未勝利。昨年オフにはダルビッシュ有と自主トレを行ない、投手としての心得を学んだ。今シーズンは前半戦こそ二軍生活が続いていたが、シーズン終盤はローテーションの一角を担い、8試合に登板して2勝をマークした。

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