【プロ野球】長引いた二軍生活のワケ。斎藤佑樹の歯車を狂わせた「テーマ」と「結果」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 6月6日に勝って5勝目を挙げて以来、斎藤は先発した6試合に勝てなかった。だから、なぜ斎藤をローテーションから外さないのかという声は、いろんな角度から栗山監督に届いていた。

 指揮官は悩んだ。

 監督、栗山英樹として、チームのバランスを優先すべきか。
 野球人、栗山英樹として、斎藤を一本立ちさせるために我を通すか。

 監督に就任して1年目の今シーズン、ファイターズはリーグ制覇を成し遂げた。11度も宙に舞った栗山監督の打った様々な手は、優勝という結果から見れば、どれも間違っていなかったことになる。

 監督として、栗山英樹はチームを優勝に導いた――このことを踏まえて、それでも欲を言いたくなるのは、開幕前に栗山監督がこういう話をしていたからだ。

「口ではいろいろ厳しいことを言ったとしても、心の中は違っていて、例えば中田翔や斎藤佑樹といった、甲子園というものを背負ってみんなに注目されている選手は、野球界のために、ファンのために、彼らをもうワンランク上のステージに上げないといけない。それが責任だと思っている。日本一になってもお客さんがゼロだったら何の意味もないのがプロ野球なんでね。そのことは僕もすごく意識しています」

"ファイターズの優勝"を、"4番中田、エース斎藤"で成し遂げるというのは、栗山監督が描いていた近い将来のファイターズのあるべき姿だった。

 繰り返すが、だから指揮官は悩んだのだ。

 優先すべきは、監督としての今のチームバランスか、野球人としての創造すべき未来か。

 そこで栗山監督は、両方を立てる方法をとった。というより、どちらは一方を選べなかったといった方が近いかもしれない。大阪の監督室で、栗山監督は斎藤にこう指示している。

 ファームで2回投げてこい。
 結果よりも、今やるべきことを優先しろ。

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