2012.06.08

【プロ野球】笑顔のバースデー勝利。
斎藤佑樹が描く「最強の24歳」とは?

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Nikkan sports

バースデーケーキを贈られ、笑顔を浮かべる斎藤佑樹 興味深い光景だった。

 試合前の札幌ドームには、いつものように三塁側のファウルグラウンドで遠投を繰り返す斎藤佑樹の姿があった。

 ところがこの日は、一塁側のファウルグラウンドにも遠投に励むピッチャーがいた。カープの野村祐輔である。

 同じ遠投といっても、斎藤のそれは30メートルから始まり、最大でも50メートル程だろうか。常に低い弾道を意識して、長い距離でもキャッチャーのミットを突き破るようなイメージを持って投げる、そういう遠投だ。しかし野村の遠投はおよそ60メートルから始まって、次第に距離を伸ばし、マックスは80メートルにも達していた。斎藤とは対照的に高い弾道のボールを投げ上げている。

 斎藤と野村が試合前に揃って遠投している。しかも、そのスタイルが微妙に違う。こういうところがおもしろい。

 斎藤は、野村のことを「ライバル」だとハッキリ口にする。広陵のエースとして夏の甲子園の決勝の舞台に立ち、神宮では早稲田と明治のエースとして投げ合ってきた歴史がそう言わせるのだろう。洞察力を武器にするという点で、ピッチャーとしてのタイプもどこかしら似通っている。今は所属するリーグも違うし、ひとつ年下であることも斎藤を素直にさせているのかもしれない。

 その斎藤と野村がプロで2度目の投げ合いを演じた6月6日の一戦は、1-1の行き詰まる展開が続いていた。パ主催のDH制の試合で再び実現した”佑と祐”の激突は、またも見応えのある投手戦となっていた。

 5月19日の広島で投げ合ったときにはともに代打を送られ、斎藤は6回1失点、野村は7回無失点でマウンドを下りた。1-0のスコアだったのに、最後までふたりが投げ合って決着をつけることができないもどかしさが残った。結局、カープが1-0で逃げ切り、斎藤に負けが、野村に勝ちがついたのだが、もし札幌でふたたび”佑と祐”の投げ合いが実現するのなら、今度こそは最後まで投げ切って決着をつけるふたりが見たいと以前、ここで書いた。その願い通り、ともに初回に1点を失ったものの、その後は互いに持ち味を発揮してゼロを並べ、”佑と祐”の対決は8回を迎えていた。