【プロ野球】岡田彰布×石山建一「伸びる選手はここが違う!」 (5ページ目)
昨シーズン、高卒ルーキーながら開幕スタメンを果たした駿太―― 岡田監督も石山さんも長く監督をやられて、伸びる選手の共通点というのは?
岡田 よく「持っている」とか「いい星の下で生まれた」とか言われるけど、そういうのはあると思いますね。もちろん、実力がないとチャンスをものにはできないんだけど、チームの顔になるような選手はチャンスが転がってくるよね。昨年の駿太なんて、まさにそう。同じポジションの選手がふたりケガをして、開幕に間に合わない。そうなった時に30歳を超えたベテランか、18歳のルーキーかとなったら、18歳に賭けてみたくなる。
石山 逆に、力はあるのに不遇というか、チャンスを逃す選手も多い。
岡田 阪神の二軍監督をしている時にいたんですよ。最初にその選手を見たとき、「これはすごい選手になる」と思ったんです。すぐにコーチを集めて、「アイツは将来、タイガースのクリーンアップを任させる逸材だから、いいところを伸ばしてやってくれ」と言いました。そうしたら、その日の夜間練習からふたりの打撃コーチがその選手の取り合いを始めたんです。同じことを指導するならまだしも、まったく違うことを言うから、フォームがバラバラになって、全然違うバッティングになってしまった。それに僕が一軍監督になってから、その選手を「一軍に上げてくれ」と言ったら、二軍のコーチが「あと一週間だけ待ってください」と。そうしたら二軍の試合でヒットを打った際に肉離れを起こしてしまい、またチャンスを逃してしまった。
石山 たしかにその選手は運もないけど、自分の意志も弱かったんだろうね。プロでやっていくには、「これでいくんだ」という意志を貫かないと。だから私は選手たちに、「自分の長所をノートに書いておけ」と教えました。プロはいろんな人がいろんな指導をするから、何をしていいかわからなくなる。でも、自分の長所を書いておくことによって、これだけは直したらダメなんだというのがわかる。コーチの話も聞くだけ聞いて、違うと思えば無視すればいいんですよ。
岡田 自己管理できる選手はやっぱり育ちますよ。そして二軍監督時代の経験もふまえて指導者として心がけることは、力のある選手はなるべく早い時期に一軍の試合を経験させてあげて、大事に長い目で育ててあげることだと。
石山 本当にその通りだと思う。今日はありがとう。
岡田 いえ、こちらこそ宮古島まで来ていただいて、本当にありがとうございました。
著者プロフィール
石山建一 (いしやま・けんいち)
1942年、静岡県生まれ。現役時代は静岡高、早稲田大、日本石油で活躍し、現役引退後は早稲田大、プリンスホテル、全日本の監督を務め、岡田彰布(現オリックス監督)、宮本慎也(ヤクルト)など、多くの名プレイヤーを育て上げた。95年には巨人に招聘され、編成本部長補佐兼二軍統括ディレクターに就任。現在は高校野球の指導や講演を中心に全国を飛び回っている。
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