【プロ野球】「3年目の正直」菊池雄星がいよいよ本格化!

  • 横山弘樹●文 text by Yokoyama Hiroki
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro

昨年は10試合に登板し、プロ初勝利を含む4勝をマークした菊池雄星昨年は10試合に登板し、プロ初勝利を含む4勝をマークした菊池雄星 2月2日、まだ肌寒い西武の宮崎・南郷キャンプ。ブルペン入りしたひとりの左腕に視線がくぎ付けになった。それが3年目を迎える菊池雄星だった。右足を高く上げ、スムーズな体重移動から左腕を一気に振り下ろす。ここまでは昨年までとほぼ同じ。だが、振り下ろされる左腕はスリークォーターからではなく真上。完璧なオーバースローで投げ降ろす菊池の姿があった。

 花巻東高時代、2009年のセンバツで準優勝、そして夏の甲子園で4強入り。スリークォーターから繰り出される最速155キロのストレートとスライダーで一躍注目の的になった。その時のフォームは、体幹を軸にした強い横回転だった。しかし、あまりの回転の強さに上半身が付いていけず、左肋骨の骨折を招いたほどだった。

 その影響もあって、入団後は投球フォームの確立に試行錯誤を繰り返した。今も「まだ固まっていない」と言いつつ、「意識したいのは、肩のラインより肘が上になっていること。腕の高さは、変えたというより変わりました」と手応えを感じはじめている。そのきっかけはオフにあった。

 昨年の12月、菊池はオーストラリアにいた。同僚の木村文紀とともに、同地のプロリーグに参加。いわゆる武者修行というやつだ。送り出した球団の狙いは3点あった。

①海外でプレイする経験を積ませ"ハングリーさ"に触れる機会を作ること
②昨年10試合に登板した左肩を休ませすぎることなく、3年目の開幕につなげること
③落ちる球種、特にチェンジアップを習得すること

 投球フォーム進化のカギは、じつは③にある。菊池が選んだ落ちる球種は、カーブだった。チェンジアップほど「抜く」ことを意識する必要がない。メルボルン・エースズの同僚に教えを乞い、110キロ台のカーブを手にした。

1 / 2

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る