【プロ野球】『手抜き』を覚えた澤村拓一に「2年目のジンクス」など関係ない (2ページ目)

  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 シーズン序盤から中盤にかけて、澤村のピッチングは常に全力投球でした。1回から9回、1番から9番までいつも一緒。これではいくらスタミナがあっても、バテてしまう。しかしシーズン終盤に入ると、全力でいくところと抜くところがわかってきて、相手を見ながらピッチングをしていました。ただ投げるのではなく、自分で試合を作りながら投げている印象を受けました。これを見たときに、2012年もいいピッチングをするだろうなと確信しました。

 とはいえ、まだ澤村には物足りなさを感じる部分もあります。それは「なぜもっとカーブを投げないのか」ということです。変化球はスライダー、フォーク、カーブがありますが、ほとんどがスライダーとフォーク。それもふたつとも140キロ近いスピード系の変化球です。確かに、スライダーもフォークもキレはいいですが、2年目となると相手も研究してくる。投球の幅を広げるためにも、緩急は絶対に必要になってくると思います。

 ピッチャーというのは遅い球を投げることをすごく怖がるんです。打たれそうな気がするのでしょうね。でもバッターだって、遅い球を打ちにいくには勇気がいる。なぜなら、基本的にバッターというのはその投手のいちばん速い球に合わせるため、遅い球はタイミングが取りづらい。それに打ったとしても飛距離が出ない。だから、追い込まれるまではなかなか手を出しにくい球でもあるんです。

 澤村もせっかくカーブを投げられるのだから、もっと有効的に活用すべきです。そうすればストレートもさらに生きてきますし、省エネにもなる。カーブという球種をバッターの頭に入れるだけでも、かなりのアドバンテージになります。そこを、彼がどのように理解しているのか、興味があります。

 いずれにしても澤村は将来、巨人のエースになれる逸材。だからこそ、2年目の今シーズン、彼がどんなピッチングを披露するのか、今からすごく楽しみですね。

プロフィール

  • 石山建一

    石山建一 (いしやま・けんいち)

    1942年、静岡県生まれ。現役時代は静岡高、早稲田大、日本石油で活躍し、現役引退後は早稲田大、プリンスホテル、全日本の監督を務め、岡田彰布(現オリックス監督)、宮本慎也(ヤクルト)など、多くの名プレイヤーを育て上げた。95年には巨人に招聘され、編成本部長補佐兼二軍統括ディレクターに就任。現在は高校野球の指導や講演を中心に全国を飛び回っている。

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