【プロ野球】『手抜き』を覚えた澤村拓一に「2年目のジンクス」など関係ない

  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

昨年、11勝を挙げてセ・リーグ新人王に輝いた澤村拓一昨年、11勝を挙げてセ・リーグ新人王に輝いた澤村拓一石山建一『選手のみかた』~巨人・澤村拓一

 昨年、11勝11敗、防御率2.03の成績をマーク、セ・リーグ新人王を獲得した澤村拓一(巨人)。本人としてみれば、勝率5割とやや不満の残る結果だったと思いますが、ルーキーで2ケタを勝つのは並大抵のことではありません。ではなぜ、澤村は1年目から結果を残せたのか?

 まず挙げたいのが、彼のストレートです。150キロを超すなどスピードは申し分ないのですが、それよりも素晴らしいのがキレです。よく150キロ近い速い球を投げるのに簡単に打たれてしまう投手がいますが、彼らはキレがない。キレのある球を投げるには、ボールに回転をかけたり、腕の振りを速くしたりと、いくつか要素がありますが、最も大事なことは下半身主導で投げられるかどうかです。簡単に打たれてしまう投手に共通しているのは、上体だけで投げていること。それでは打者の手元で伸びないし、体重も乗りません。

 その点、澤村は下半身で投げている。彼の太ももを見れば、しっかり走り込み、トレーニングを積んできたのが一目瞭然です。これによってスピードだけでなく、キレもあり、球質の重いストレートを投げることができる。だから、多少コントロールがアバウトでも抑えることができたのだと思います。

 そしてもうひとつは、学習能力の高さ。夏場にかけて勝てない時期がありましたが、あれは大卒1年目の投手でよくあることなんです。なぜなら、大学野球は春と秋のリーグ戦しかありません。つまり夏場の公式戦はない。それを4年間続けてきたわけですから、体が夏に投げることに慣れていないんです。もちろん澤村も苦労しましたが、しっかりと修正していた。彼の一番の進歩は、いい意味での"手抜き"を覚えたことでした。

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