打者・大谷翔平は"100%"で振らなくてもいい 「75%でもエリート」ドジャース打撃コーチが語る32歳の進化 (3ページ目)
【3.具体的な打撃のメカニック面での工夫】
「彼はこの2年半、ワイド、オープン、ナローとさまざまなスタンスやセットアップを試してきました。ただ、メカニックのなかで一貫していることがあります。
彼がボールを自分のところまで十分に引きつけて、ストライクゾーンの深いところで捉えられている時。そして、そのままセンター方向、球場の真ん中へ向かってバットを出し続けられている時。そういう時が、彼は最もいい打撃をしています。
それから、当然ですが、タイミングも非常に大きな要素です。いつ前足を地面に着けるのか。そこからどういう形で体重を前方向、ボールのほうへ移していくのか。そこは彼の打撃にとって非常に重要です。では、例えば彼が"もう少し力を使わずに打とう"とか、"もっと確実に芯で捉えよう"とした場合、メカニックとしてどうなるか。
おそらく、少し長い時間、体重を後ろ側に残すことになると思います。後ろ足側に、少し長く残る。そうするとボールをより深く、長く見ることができ、そのぶんだけスイングするかどうかを判断する時間も増えます。
ただ、私は、彼がそれを目的として"こういうメカニックに変えよう"と、意識的にメカニカルな変更を加えたとは思っていません。むしろ、彼が自分の置かれている状況に合わせて適応した結果として、そういう打ち方になっているのだと思います」
『Statcast』には「インターセプトポイント」という指標がある。大谷はホームプレートを基準にしたコンタクト位置が、2025年の−1.4インチ(約3.6cm)から2026年は−4.5インチ(約11.4cm)へと3.1インチ(約7.9cm)深くなった。打席での立ち位置も29.0インチ(約73.7cm)から30.8インチ(約78.2cm)へと1.8インチ(約4.6cm)捕手寄りになった。さらに、打者自身の重心を基準にしたコンタクト位置も27.6インチ(約70.1cm)から26.3インチ(約66.8cm)へと1.3インチ(約3.3cm)身体に近づいている。つまり、打者自身を基準にしても、昨季よりボールを引きつけて捉えている。
8月17~19日のコロラド・ロッキーズ3連戦では3本塁打。久々に大谷らしい破壊力を見せつけた。それでも本人の視線は、本塁打そのものには向いていなかった。
「たまたま長打が出ていますけど、特にコンタクトをしっかりしながら、というのは意識したい」
75マイル以上で振る割合は減った。それでも30本塁打を超えるパワーは残る。より深くボールを見て、より確実に捉える。
100%で振らなくてもいい。
32歳を迎えた二刀流・大谷は、持てるパワーをすべて使う打者から、必要な時に必要なだけパワーを使える打者へと変わりつつある。
著者プロフィール
奥田秀樹 (おくだ・ひでき)
1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。
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