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【MLB】村上宗隆がメジャーで活躍できている理由を元サイ・ヤング賞投手、監督、打撃コーチがそれぞれの視点で語る (2ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Hideki Okuda

【まるで車を整備するように】

 それにしても、なぜこれほど少ないスイング数で、強烈な打球を生み出せるのか。春季キャンプから調整の様子を見守ってきた打撃コーチのデレク・ショーモンは、興味深いたとえを用いた。

「何が優れているかというと、"調整しようとする意思"なんです。ムネは常に自分のスイングが今どういう形になっているのかを把握している。たとえるなら、車のアライメント調整のようなものですね。ほんのわずかなズレでも、その都度きちんと修正する。その修正は毎日のこともあれば、1週間単位で取り組むこともあります。

 いずれにしても、大きく崩れてから直すのではなく、ズレが生じた瞬間に整えていく。そうやって常に状態を最適な位置に保つことで、試合に出たときに本来のスイングを出せるんです」

 走行中の車が段差や摩耗によって歪めば、タイヤやサスペンションの角度をミリ単位で修正しなければならない。村上の打撃における作業は、それに近いというわけだ。

 再建途上にあるホワイトソックスが村上をトレードするかどうかは、最終的には球団トップの判断に委ねられる。球団の目標はあくまで優勝であり、そのために最善の策を講じなければならない。しかし、現場で取材して感じるのは、村上の価値は本塁打だけにとどまらないということだ。彼のプロフェッショナルな姿勢は、若い選手の多いチームにおいて格好の手本となっている。

 チーム内で最も気心の知れた存在が、同い年の三塁手、ミゲル・バルガスだ。父はキューバが五輪連覇を果たした際の主力だったラザロ・バルガス。いわば"サラブレッド"だが、ここまでは安定感に課題も残している。そこに現れたのが、村上だった。

「パワーは信じられないレベル。でも、それだけじゃない。規律というか、毎日必ず何かに取り組んでいる。ああいう姿勢はすごい。チームにいてくれて本当にありがたい存在です」。アリゾナ・ダイヤモンドバックスとのシリーズでは、2試合連続でアベック本塁打も記録した。「彼みたいな選手が近くにいると、自分もそうなりたいって思うんですよ。チーム全体にもいい影響がありますし、みんなの目標になる存在ですね」。

 一方の村上は、現在ホワイトソックスにいることについて、こう語る。

「すごく若いチームですし、みんなフレンドリーに接してくれて、本当にすばらしいチームです」

 さらに、打線全体にいい影響が広がっていることについて問われると、こう続けた。

「そうなれたらすごくうれしいですし、僕自身もみんなから力をもらって、打線として機能して、しっかり相手チームに勝っていければいいなと思います」

 ホワイトソックスは2025年、チーム本塁打数165本で30球団中23位にとどまった。しかし今季はここまで33本で6位。村上の存在が、打線全体に変化をもたらしていることは明らかなのである。

著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

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