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【MLB日本人選手列伝】松坂大輔 「1億ドルの男」の重圧を背負って戦い続けた「平成の怪物」 再評価されるべき波瀾万丈の足跡 (2ページ目)

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke

【再評価されるメッツでの献身性】

 3年目以降、不振と故障を繰り返すようになった松坂は、2011年には右肘のケガでトミー・ジョン手術も受けた。そこからの成績低下に関しては議論の余地はなく、レッドソックスを離れて以降はリリーフでの登板も増えていく。もはや主戦格ではなく、アメリカでの注目度も激減していった。

 ただ、メッツに移籍した2013年後半も、実は地道な働きは続けていた。メジャーでの最後のシーズンとなった2014年も3勝3敗1セーブ、防御率3.89。決して派手な数字ではないが、台所事情の苦しいチームで、先発、中継ぎ、ロングリリーフと多彩な役割で83回1/3を投げ、貢献していた。本人は納得していないかもしれないが、生真面目に投げ続けたメジャーキャリア晩年の献身的な姿勢を、『スポーツ・イラストレイテッド』誌のベン・ライター記者はこのようにも評していた。

「これだけ長い間、メジャーで過ごした投手が悪い選手のはずがない。当初の期待に応えることはできなかったかもしれないけど、一部で言われているように松坂のキャリアが完全に失敗だったとはまったく思わない。レッドソックスの優勝に貢献したし、サイ・ヤング賞投票で票を得るほどのシーズンもあった。何より、メジャーで8年を過ごした。

 力がない投手だったら、それだけの期間をメジャーで過ごすことはできない。彼は日本人投手がスターになれること、長いキャリアを過ごせることを証明した。"偉大なキャリア"とは言えないのかもしれないけど、"優れたキャリア"だよ」

 異常なまでの誇大宣伝に見合わなかったからといって、完全な失敗と決めつけるのは確かに短絡的すぎる。メジャーでの松坂は波瀾万丈のキャリアを歩み続け、いいことばかりではなかったが、実際には悪い結果ばかりではなかった。"1億ドルの男"の称号と重圧を背負い、歩み続けた足跡は間違いなく日本人選手のメジャー挑戦史に刻まれる。これからも忘れられることはなく、より好意的な形で再評価されるようになったとしても驚くべきではないのだろう。

【Profile】まつざか・だいすけ/1980年9月13日、東京都出身。横浜高(神奈川)。1998年NPBドラフト1位(西武)。
●NPB1軍プレー歴(12年):西武(1999〜2006)―福岡ソフトバンク(2016)―中日(2018、19)―埼玉西武(2021)
●NPB通算成績:114勝65敗1セーブ(219試合)/防御率3.04/投球回1464.1/奪三振1410
●MLBプレー歴(8年):ボストン・レッドソックス(2007〜12/ア)−ニューヨーク・メッツ(2013〜14/ナ) *ア=アメリカン・リーグ、ナ=ナショナル・リーグ
●MLB通算成績:56勝43敗(158試合)/防御率4.45/投球回790.1/奪三振720 *プレーオフ(2年/2007、08):3勝1敗(7試合)/防御率4.79/投球回35.2/奪三振33
●主なMLBタイトル&偉業歴:ワールドシリーズ優勝(2007)
●日本代表歴:2000年シドニー五輪(4位)、2004年アテネ五輪(3位)、2006年WBC(優勝)、2009年WBC(優勝)

著者プロフィール

  • 杉浦大介

    杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)

    すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう

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