佐々木朗希はいつ自らの速球を再発見したのか リリーフとしての成功を導き出したドジャースの組織力 (2ページ目)
【万全な状態に戻るまで待てるドジャースの選手層と資金力】
1年目の山本の場合は、日本ですでに完成された投手だった。それでもドジャースは、3カ月という時間を与えた。結果、1年目のポストシーズンで4試合に先発し、2勝を挙げた。一方の佐々木は日本での最後の2シーズン、肩や腹斜筋のケガと闘うなかで速球の球速が落ちていた。効率の悪い、ぎこちないフォームへと変わっていた。それを直すには長い時間が必要だったのである。
今は2022年に千葉ロッテで完全試合を達成した時のように、自信を持ってマウンドに上がれるようになった。佐々木は「ストレートの強さとスピード、コントロールがいいラインまで来たので、ゾーンで勝負できる。いい緊張感のなかで投げられていますし、自分がこうすればいいパフォーマンスを出せるという、技術的な部分で信頼できるものがあります」と説明する。
公式戦最終週にメジャーに復帰した佐々木は2試合連続で無失点を記録し、ポストシーズン突入。他の救援投手が崩れるなか、彼だけが完璧なゼロを並べ続け、クローザーへと上り詰めた。
ドジャースで、万全に投げられるようたっぷり時間をもらっているのは佐々木だけではない。スネルも今季の公式戦登板はわずか11試合・61回1/3イニング、グラスノーも18試合・90回1/3イニングにとどまり、おかげで今、ポストシーズンに100%の状態で臨んでいる。
気になるのはこういったぜいたくな起用法が、すべての球団に許されるわけではないということだ。ドジャースが10月の主力を公式戦中に休ませられるのは、圧倒的な選手層と資金力を持つからだ。現在、ドジャースの年俸総額は3億4090万ドル(約511億3500万円)。ぜいたく税の基準値を大きく超えており、さらに1億6740万ドル(約251億1000万円)のぜいたく税を支払わなければならない。今季の総支出は5億830万ドル(約762億4500万円)に達する見込みで、これはメジャーで最も支出が少ない6球団----フロリダ・マーリンズ、オークランド・アスレチックス、タンパベイ・レイズ、シカゴ・ホワイトソックス、ピッツバーグ・パイレーツ、クリーブランド・ガーディアンズ----の合計年俸に当たる。極端な言い方かもしれないが、6球団分の戦力のようなものだ。
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