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【MLB】サイ・ヤング賞投手たちが賞賛  山本由伸が上る「エース」から「スーパーエース」への階段 (2ページ目)

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke

【絶好調のままプレーオフで支配的存在になれるか?】

 内外角をていねいに投げ分ける精密コントロールこそがおそらく山本の最大の長所だろう。無四球試合は今季すでに4度を数え、背後で守るドジャースの同僚たちもその質の高さをよく指摘している。

 また、球種の多さ、フォームの完成度の高さも特徴のひとつ。コールもまたそれらに感心させられていることを隠さなかった。

「3つの球種が本当にいい。ひとつ目は速球、ふたつ目はスプリット、そしてスローなブレイキングボール、カーブだ。カーブはテンポを変えるいい球だと思う。速球とスプリットは彼の主力の武器だ。また、投球フォームも上質で、本塁に向かうまでの動きがスムーズだし、直線的に身体を運んでいる。前足側に身体が流れすぎたり、腕が遅れたりしない」

 今年3月に受けたトミー・ジョン手術からリハビリ中のコールだが、山本を褒め称える言葉は止まらなかった。最後に「彼は本当にいい投手だ。史上最高額の投手なんだから!」と笑顔。2023年12月に山本がドジャースと結んだ12年3億2500万ドルの契約は大きな話題となったが、実際に今となってはもう誰も「払いすぎ」とは思わないだろう。

 9月18日まで3試合連続で1安打ピッチングを継続した山本は今秋、まさに絶好調。近い将来、ノーヒッターを成し遂げ、サイ・ヤング賞を受賞しても驚くことではない。ただ、そんな山本が真の意味で"スーパーエース"として認められるためには、プレーオフでの支配的な投球が必要になってくる。

 去年の山本はプレーオフでも4試合で2勝0敗、防御率3.86という安定した働きでドジャースの世界一に貢献した。ただ、初登板となった地区シリーズ第1戦では3回5失点と打ち込まれ、ヤンキースとのワールドシリーズで7回途中まで1安打に抑えた以外、すべて5イニング以内で降板した。

 今季のドジャースはブルペンが崩壊しており、先発ローテーションの投手たちがより長いイニングを投げることが連覇への必須条件になりそうだ。スネル、グラスノー、大谷翔平とビッグネーム揃いの先発陣のなかでも、今では軸として認められるようになった山本への期待感は大きい。ここでも結果を出せば、上昇中の評価はさらに高まるに違いない。

「去年は1年目でいろいろ慣れないことがありました。今年はやっていることはそんな大きくは変わらないですが、より落ち着いて自分のやるべきことをやれている感じですかね」

 今春、山本はそう述べていたが、今季のより安定したパフォーマンスを見て心強く感じているファン、関係者は多いはずだ。

 気力、体力が充実し、今まさにピークにいる背番号18。いよいよ集大成の時期が近づいても、1年前よりリラックスしてマウンドに立てるのだろう。身長178cm、80キロという小柄なエースが、名門球団を背負って立つプレーオフの季節がもう間近に近づいている。

著者プロフィール

  • 杉浦大介

    杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)

    すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう

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