大谷翔平が緊急先発登板で見せた100マイル超多投の凄みと冷静さ ロサンゼルスに新たな巨大壁画も登場 (2ページ目)
【レドンドビーチ沿いの壁画はロスの新名所に】
ロサンゼルスという街では、これまで数えきれないほど偉大なアスリートが活躍してきた。しかしながら評価されるのは、必ずしも記録やタイトル数だけではない。むしろ人々を惹きつけるのは、困難に直面したときにどう振る舞うかという断固たる姿勢だ。
1978年生まれ、2020年に41歳で急逝した元ロサンゼルス・レイカーズのコービー・ブライアントは街中に壁画が描かれている。それは彼の有名な"マンバ・メンタリティ"が人々を魅了してきたからだ。
「昨日の自分より今日の自分が成長していること」を常に目指す。単なる勝利至上主義ではなく、自己改善の追求、逆境を恐れない姿勢、努力と準備を惜しまない覚悟、プレッシャーのなかで最高のパフォーマンスを発揮する力などである。
9月5日の大谷の登板には、その精神が宿っていたと思う。体調不良を抱えながらもチームのために登板し、ゼロを並べた。100マイルを投げ続けた。ひたむきな姿は、ブライアントの生きざまと重なり、ロサンゼルスの人々の心を打つ。そしてその精神性は、アートの世界にも広がる。
ロサンゼルス国際空港(LAX)の南、レドンドビーチ。パシフィック・コースト・ハイウェイ沿いに新しくオープンしたレストラン「Eat Fantastic」の外壁に、巨大な壁画が新しく描かれている。そこに登場するのは、大谷と愛犬デコピン、ムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマン、ラッパーのアイス・キューブ、そしてドジャースのユニフォームをまとったコービー・ブライアントだ。
制作したのは、38歳の壁画アーティスト、グスタボ・ゼルメーニョさん。空港の北側にある海辺の街ベニスで生まれ育ち、数多くの壁画を残してきた。ラテン音楽の女王セレーナ・キンタニーヤ、地元出身のラッパー兼実業家ニプシー・ハッスル、ブライアントなど、音楽やスポーツ界のアイコンを描き続け、その作品は地元メディアでも度々取り上げられた。ゼルメーニョさんに新作に込めた思いとは――。
つづく
著者プロフィール
奥田秀樹 (おくだ・ひでき)
1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。
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