中田翔、小笠原慎之介、福敬登が示す「野球人の使命」とチャリティ活動の舞台裏 アフリカ支援からヘアドネーションまで (3ページ目)
「いつももらってばかりじゃ、嫌だな」
「このことを知らない選手も、きっと多いんだろうな」
「そういえば自分は高校時代、健康福祉科で手話を習って、自分の名前を覚えたよな」
20代も後半になり、そろそろ何か社会に還元したいという話を家族としたという。
こうして福は聾学校の生徒たちと交流を持つようになった。彼が活動を始めた当初、周囲の反応はどのようなものだったのかを尋ねた。村上氏は慈善事業を始めた頃、「格好つけやがって」といった言葉を浴びせられたという。今では時代も変わり、周囲は好意的になっているだろうと私は考えていたが、そうではなかった。
「いやいや、そんなことのオンパレードですよ。特にOBからは......」
その答えには正直、驚かされた。残念ながら、村上氏が懸念していた「親世代が余計なことを言いかねない」という予想が、的中してしまったのだ。
「もっと活躍してからやれ」
「そんなことをする余裕があるなら、野球に集中しろ」
そんな言葉を浴びせられても、福は気にせず行動を続けた。見て見ぬふりをする自分を許せない。それは、自分ではないからだ。そんな福を支えているのは、高校時代の学び、そして社会人時代に得た経験だという。
【心ない声にも信念は揺るがず】
「やっぱり、JR九州時代の経験は大きかったです。小倉駅で駅員をしていた時、社会の冷たさを嫌というほど味わいました。それでも、ごくたまに自分の行ないに対してお礼の手紙をもらうことがあって、それが本当にうれしくて」
周囲に惑わされず我が道をゆく福は先月、新たな支援を表明した。一昨年の春から髪を伸ばし続け、ファンの間でも彼のヘアスタイルの変化が話題となっていた。その目的は小児がんを患う男の子たちへのヘアドネーション(※)だ。
※小児がん、先天性の脱毛症、不慮の事故などで頭髪を失った子どものため、市民から寄付された髪の毛でウィッグを作り、無償で提供する活動
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