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中田翔、小笠原慎之介、福敬登が示す「野球人の使命」とチャリティ活動の舞台裏 アフリカ支援からヘアドネーションまで (2ページ目)

  • 加藤潤●文 text by Kato Jun

 おそらく野球用具が不足しているであろうアフリカの少年たちへの、ささやかなお土産である。小笠原にタンザニア訪問の理由を説明し、「野球バッグをひとつもらえないか」と相談したところ、快く応じてくれた。

 連盟会長のアルフェリオ・ンチンビ氏からは、「せっかくだから代表チームで使おうかな」との言葉をいただいた。「11 Ogasawara」と刺繍されたバッグが、国際大会の舞台でタンザニア代表のベンチに置かれる──。その光景を想像するだけで、なんとも楽しい気持ちになる。ブルキナファソとタンザニア。国は違えど、アフリカの地に小笠原の想いは、形となって残っている。

 ドラゴンズからアメリカへと巣立った小笠原。藤浪晋太郎がそうであったように、彼にもきっと多くの発見が待っているはずだ。

 その気づきは、グラウンドのなかだけにとどまらず、アメリカの生活習慣や、さらにはその根底にある文化的・宗教的背景にまで及ぶことだろう。数年後、そんな学びを経た彼の言葉に耳を傾ける日が、今から楽しみでならない。

【クレメンテの精神を体現する男】

 話を中田に戻そう。クレメンテに想いを馳せ、深く心を動かされた中田だが、彼自身もチャリティへの意識は高い。ひとり親家庭を球場に招待したり、コロナ禍には医療従事者へ寄付金を送ったりと、これまでにもさまざまな支援活動を行なってきた。

「うちらはさ、運よくたくさんお金をもらえるわけでしょ? だったら、何かしらの形で社会に還元したいよね」

 それが中田の本心だろう。クレメンテの存在を知らずとも、ピッツバーグの球場でクレメンテが村上雅則氏に向けた言葉を、中田は自分の言葉で紡いだ。

 中田と共にその場に居合わせていたのが福敬登だ。彼の話は示唆に富む。

 ある試合後のヒーローインタビューで、彼は大きな写真をプレゼントされた。その写真が収まっている額の木枠は、聾(ろう)学校の生徒たちがつくっていると知り、その時、さまざまな思いが頭をよぎったという。

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