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【MLB】大谷翔平の二刀流復帰とインターナルブレース手術 元最多勝投手は「2度目の大手術はキャリアの終わりじゃない」 (3ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

【「そういう意味では、まだ道半ば」】

 投球面についても、今後、大谷が通常の先発投手のようにイニングを増やしていくかどうかについて、ロバーツ監督は明言を避けている。「未定です。我々は常に慎重に進めるつもりだし、今は情報を収集して土台を作っている段階。本格的に強度が上がってくれば、その時点でまた別の話をすることになる」と説明した。

 今季、大谷がオープナーの強化版的な役割にとどまるのか、それとも普通の先発投手のようになるのか、現時点ではまだわからない。本人も、2度目の登板を終えた時点でこう語っている。「まだ投球フォームやメカニックの細かい部分に修正点がある。そういう意味では、まだ道半ばだと感じています」。

 ご存じのとおり、大谷は過去にはセットポジションのみで投球していたが、今季はノーワインドアップも併用している。また、アームアングル(腕の角度)も変化しており、2021年には45度だったものが、段階的に下がって、今年は34度になった。この変化により、スイーパーやツーシームなど横方向の変化がより効果的になる。さらに、大谷は投球板(プレート)を踏む位置も、セットポジションとノーワインドアップで使い分けている。狙いについて問われると、「そのほうが抑えられると思ったからです」とだけ答えた。

 ちなみに、ツーシームは2022年から投げ始めており、同年の使用率は3.7%、翌23年は6.5%、今季はここまで13.7%に増加している。今季、一番使っている球種はスイーパーとフォーシームで、それぞれ35.6%の使用率を占めている。

 フォーシームに関しては、球速だけでなく「回転効率」も大谷の課題とするポイントだ。回転効率とは、ボールの総回転のうち、どれだけが揚力として作用しているかを示す指標のこと。大谷は「回転効率も球速帯とのバランスが一番大事だと思っています。今日みたいに100マイル近く出ていて、浮力も悪くなかったので、それなりのスピン効率にはなっていたと思う。まだ全部はチェックしていませんが、少しずつ進歩しているのではないかと感じています」と語った。

 MLB公式のデータサイト『Baseball Savant』によると、今季の大谷のフォーシームのアクティブ・スピン率(=投球の総回転のうち揚力など変化に寄与した回転の割合)は83%で、2023年の76%から上昇していた。まだ投球数が26球とサンプルは少ないものの、本人は確かな手応えを感じているのである。

著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

  • 大谷翔平

    大谷翔平 (おおたに・しょうへい)

    1994年7月5日生まれ。岩手県水沢市(現・奥州市)出身。2012年に"二刀流"選手として話題を集め、北海道日本ハムからドラフト1位指名を受けて入団。2年目の14年にNPB史上初の2桁勝利&2桁本塁打を達成。翌年には最多勝利、最優秀防御率、最高勝率の投手三冠を獲得。

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