大谷翔平、「二刀流」復帰が与えるドジャース2連覇のためのチーム編成&戦術への影響 (3ページ目)
【試されるフリードマン編成部長の手腕】
筆者が最も注目しているのは、エンゼルス時代と異なり、世界一を目指すドジャースのフロントが、この"二刀流アドバンテージ"をどう生かしていくかという点である。アンドリュー・フリードマン編成本部長を筆頭とする首脳陣の戦略と手腕が、まさに試される。
大谷は16日の試合では1イニングのみの登板だったが、本人が明かしたように、今後は週に1度登板しながら、少しずつイニング数を伸ばしていく計画だ。理想を言えば、オールスター後には、2022年にサイ・ヤング賞投票で4位に入ったシーズンのように、先発として毎回6イニング前後を投げられる状態に戻ることだろう。
しかし、約2年のブランクがあることを考えると、それは現実的な目標とは言い難い。フリードマン編成本部長は、大谷の投手復帰前にこう語っていた。
「短期的な視点で見れば、我々にも彼を早く戻したいという気持ちはある。しかし、当初からこれは"次の9年間にわたり、彼が投手として投げられる状態を作るためのプロセス"だと捉えてきた。だからこそ、最初の年は長期的な視点を優先し、焦りすぎないことが非常に重要だ」
さらに彼はこう続けた。
「投打の両方をこなすことが、どれほど大変なことか想像もつかない。リズムに乗り、身体がその負荷に慣れていれば違うのかもしれないが、翔平が最後に本格的な"二刀流"を実践してから、かなりの時間が経っている。そもそも、あのレベルで両方をこなせる選手など、これまで存在しなかった。
だから我々としては、右腕の筋肉を作り上げるだけでなく、"打つ・投げる"両方に耐えられる全身の持久力も同時に養い、なおかつ彼の打撃に悪影響を与えないようにしたい」
したがって、大谷は通常の先発投手のように毎回6イニングを目標とするのではなく、戦略的に1〜2イニングだけを投げる「オープナー」として登板する日、あるいは複数イニングを投げる日など、柔軟に起用法を変えていくことになるのではないか。首脳陣は、投手・大谷が10月のポストシーズンに万全な状態で臨めることを最終目標としている。
近年のMLBでは、ポストシーズンは、試合間にオフ日がより多く設けられていることもあり、創造的で柔軟な投手起用が実行される傾向にある。ドジャースはその戦略を、レギュラーシーズン中から試せる。すなわち、相手打線に対する"仕掛け"を、ポストシーズンを見据えて前倒しで導入するのである。
つづく
著者プロフィール
奥田秀樹 (おくだ・ひでき)
1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。
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