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大谷翔平の獲得後もドジャースがクラブハウスを重要視する理由 スタジアム1億ドル改修の責任者にインタビュー (2ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

【最先端技術を駆使した最新鋭のクラブハウスづくり】

選手たちに最高の環境を備えたクラブハウスを提供することも改修工事の大きな目的 photo by USA Today/Reuter/AFLO選手たちに最高の環境を備えたクラブハウスを提供することも改修工事の大きな目的 photo by USA Today/Reuter/AFLO 筆者は1990年から取材でドジャースタジアムに通っていたので、95年入団の野茂英雄の頃の選手着替え用のロッカールームがどれだけ狭かったかはよく覚えている。記者会見場もなく、試合後の野茂はロッカールームの奥の物置のような部屋で会見をしていた。それが12年前のリフォームでロッカールームが広くなったが、それだけではない。

「クラブハウスは人によって定義が違うかもしれませんが、うちではロッカールームはクラブハウス全体の約20%。ほかに各種治療室、スプリントやスレッドトレーニング用のトラック、ウエイトルーム、カフェテリアやラウンジなどすべてを含めます」(スミス氏)

 だが、それが十分ではなくなった。スペースが足りなくなるのは、野球が年々進化し、必要とするものが増えていくからだ。室内ケージもAI打撃マシン/トラジェクトアークが置けるだけの奥行きが必要になる。

「ケージもひとつではなくふたつにという流れになっていますし、10年前であればナップルーム(仮眠室)は一部屋で十分でしたが、今では多くの選手がプライバシーを確保でき、リラックスできるスパ並みの環境が求められています。そもそもコーチなどスタッフの数も増えています」(スミス氏)

 最先端のクラブハウスを持つことは、チームの勝利にも直結する。ニューヨーク・ヤンキースのハル・スタインブレナーオーナーは2024年のシーズン中、チームの好成績に気をよくし、こんな話をしていた。

「私たちは今季クラブハウスに新技術を導入しました。レッドライトセラピー、インフラレッドサウナ、高気圧酸素チャンバーを選手たちは本当に気に入っていますし、ケガを減らすことにつながっています」

 レッドライトセラピー(赤色光療法)は、特定の波長の赤色光を皮膚や筋肉、関節に照射することで、細胞の修復や再生を促進し、痛みを軽減させ、炎症を抑える効果があると言われている。一方、インフラレッドサウナは、赤外線を使用して体内に直接熱を伝え、組織や筋肉を温めることで発汗を促進し、代謝を活性化させて体の機能を整える。高圧酸素療法室は、密閉された圧力の高い空間で純酸素を吸入する治療法で、組織修復を助け、創傷の治癒を加速させる。

 メジャーのトップチームは新しいテクノロジーを取り入れ、選手をサポートする設備でも競い合う。ドジャースは再拡張のクラブハウスでこのエリアでも優位に立とうとしている。

第3回(全4回)につづく

著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

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