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大谷翔平vsメッツ投手陣、強力なドジャースのブルペン...リーグチャンピオンシップシリーズの行方をデータで分析 (3ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

【データに裏付けされたブルペンデーの威力】

 リーグチャンピオンシップシリーズでドジャースがメッツを倒すには、地区シリーズのようにブルペンが大活躍することである。ご存じのように、ドジャースには信頼できる先発投手がいない。山本由伸は地区シリーズ第5戦で5回無失点の好投を見せ勝ち投手となったが、ゆえに優勝決定シリーズは早くても第4戦の先発になる。第3戦だと、メジャーに来てから1度も経験していない中4日登板になるからだ。

 そして第4戦からなら、シリーズが第7戦までもつれた場合でも、1度しか登板できない。となると第1戦先発のジャック・フラーティと第2戦先発が見込まれるウォーカー・ビューラーが2試合ずつ先発し、さらに2試合はブルペンデーになると思われる。ドジャースのブルペンはいい。5月と6月の防御率は2点台で、7月は5点台と調子を落としたが、シーズン終盤には安定した。ブレーク・トライネン、アンソニー・バンダ、マイケル・コペック、アレックス・ベシア、エバン・フィリップス、ダニエル・ハドソンの6人はレギュラーシーズンで合計302回1/3を投げ、防御率2.53。ポストシーズンでも好調を維持している。

 パドレスとの地区シリーズ、パドレスが挙げた21得点のうち、15点はドジャースの先発投手(山本、フラーティ、ビューラー)から奪ったもの。ドジャースのブルペンが許したのは6点。6点のうち4点は、10対2で敗れた第2戦で、信頼度の低い(勝ちパターンでは使わない)マイケル・グローブとエドガルド・エンリケスが献上した。第4戦はご存じのようにブルペンデーで8投手の継投で8対0と快勝、シリーズの流れを変えた。公式戦でもドジャースがブルペンデーとして戦った8試合は、5勝3敗、防御率2.92の好成績である。

 ブルペンデーの有効性は、セイバーメトリクス(データを統計学的見地から客観的に分析し、選手の評価や戦略を分析する手法)の世界ではすでに証明されている。今の野球ではトップクラスのリリーフ投手は、トップレベルの先発投手が打線の1巡目に投げる時よりも長打率、OPSを低く抑えている。そして2番手クラスのリリーフでも、トップレベルの先発投手が2巡目の打者に、また2番手レベルの先発投手が1巡目の打者に投げる時よりも打者を抑えている。さらに言えば、3番手クラスのリリーフは、2番手レベルの先発投手が2巡目、3番手レベルの先発投手が1巡目に投げる時よりも打者を抑えられるといった具合だ。これらはすべてデータに出ている。

 ちなみに50年前は違った。トップレベルの先発投手は打線の1巡目でも2巡目でも、そして2番手レベルの先発投手は1巡目に対して、トップクラスのリリーバーよりもしっかり抑えていた。しかし今はリリーフ投手のレベルが飛躍的に上がり、立場が逆転した。

 メジャーの試合を見ていると、まずまずのピッチングをしていた先発投手が5イニングを投げきらせてもらえず、勝ち投手の権利を得る前に交代させられることがよくある。それは監督が非情ということではなく、先発投手を3巡目の打者に当てるより、リリーフに代えたほうが結果がいいとデータではっきり示されているからだ。とりわけポストシーズンについては、首脳陣は勝つためにいかに27個のアウトを取るかを論理的に考え、プランを立てる。先発投手に少しでも長いイニングを投げてほしいとダグアウトから祈るような視線を送るのではなく、どんどんブルペンに代えていく。とりわけポストシーズンは移動日の休みがあるから、パドレスがスコットを5試合中4試合で大谷に当てたような起用が可能になる。

 とはいえ、首脳陣が気をつけなければならないのは、ブルペンを使いすぎて疲弊させてしまうことだ。第1戦のフラーティ、第2戦のビューラーの降板後、ブルペンは4イニング前後を投げるだろう。そして移動日を挟んで第3戦はおそらくブルペンデーである。疲弊させないためには、この試合は勝てないと判断すれば、4番手の先発と目されていたブランドン・ナックをロングリリーフで敗戦処理に回すなど、状況の見極めが重要だろう。

 順番どおりに事が進めば、第7戦もブルペンデーになる。7試合、189個のアウトのうち、ブルペンが半分以上を取らねばならないが、トライネン、バンダ、コペック、ベシア、フィリップス、ハドソンをいいコンディションに保ち、彼らの取ったアウトが確実に勝ちにつながるようにしたいのである。

著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

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