大谷翔平vs.ジャッジが2028年オリンピックの舞台で!? MLBで盛り上がるメジャーリーガー五輪出場の気運と公式戦日程の障壁 (4ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

【課題は残るもMLB側と選手組合は前向き】

 ちなみに五輪野球で金メダルを最も多く獲得しているのはキューバだ。1992年バルセロナ、1996年アトランタ、2004年アテネと3度も制した。特に活躍したのはラザロ・バルガス三塁手。バルセロナ五輪でオリンピック史上初のサイクル安打をマーク、37打数17安打で金メダルに貢献した。アトランタ五輪でも35打数12安打で連覇を達成。英雄としてキューバで切手にもなっている。その息子ミゲル・バルガスはドジャースでプレーしていたが、先日のトレードデッドラインにホワイトソックスに移籍したが、ミゲルもMLBがトッププレーヤーをオリンピックに送ることに賛成だと言う。

「父がオリンピックで活躍したときはまだ生まれていなかったから、見ることはできなかった。でもうちの家族は父をとても誇りに思っているし、2008年北京五輪の時は兄弟でテレビにかじりついて見ていた記憶がある。キューバはあの時は銀メダルだった。

 オリンピックでメジャーリーガーがプレーするのは、とてもいいこと。世界的なイベントでインパクトが大きいし、トッププレーヤーたちも国を代表して戦いたいと願っているからね」

 現在60歳の父親は、今はフロリダ州マイアミにいて野球アカデミーを営んでいるそうだ。

 こうした前向きな意見があるものの、みんなが前向きなわけではない。

 アスレチックスのマーク・コッツェー監督(48歳)は1996年アトランタ五輪のアメリカ代表で2番レフトで常時出場、打率3割をマークし、銅メダルを獲得した経歴を持つが、異なる意見の持ち主だ。

「国を代表してプレーすることに大きな喜びと誇りを感じた。だから、ロサンゼルスで再び野球がオリンピック競技に戻るのはうれしい。しかしメジャーリーグの選手がオリンピックのために2週間も休むのは現実的ではない。私の出た時のように、トップアマチュア選手から選んで、最高の舞台に立たせればいいと思う」

 ちなみに米スポーツサイト『ジ・アスレチック』がメジャーリーガーを対象に行なった調査によると、シーズンを中断してでもトップ選手を出すべきと考えるのは46.6%にとどまり、反対が53.3%であった。賛成派の主な意見は、オリンピックに出るチャンスなんてそうはないし、すごく楽しいだろうというもの。反対派からはケガが増えるし、アメリカが強すぎて他国を圧倒するだけというのが主な理由として挙げられている。

 とはいえ、MLBのトップは前向きに考える方向に舵を切っている。オールスターウィークの記者会見ではロブ・マンフレッド・コミッショナーも、MLB選手組合のトニー・クラーク代表も、以前とは違って前向きになっていた。マンフレッド・コミッショナーは「どのようにすれば可能なのか、シーズンにおいてどのような妥協が必要かを話し合っている。私はこのテーマに関してはオープンな姿勢を保ち続ける」とコメントした。

 ぜひ2028年、大谷vs.ジャッジを実現し、未来につなげていってもらいたいと考える。

プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る