ドジャース山本由伸は、なぜMLB投手で歴代最高の契約を結べたのか? 評価を上げた要因は2つある (2ページ目)

  • 三尾圭●取材・文・撮影 text & photo by Mio Kiyoshi

【山本が高評価を得られた2つの理由】

 なぜ、山本はこれほどまでの高評価を得られたのか。「年齢」と「日本での圧倒的な実績」の2つの要因が挙げられる。

 第1の要因である「年齢」だが、山本は25歳と、他のFA投手と比べて5歳以上も若い。

 今オフの大物FA先発投手の年齢だが、スネルは31歳、フィラデルフィア・フィリーズと7年総額1億7200万ドルで再契約を結んだアーロン・ノラは30歳、セントルイス・カージナルスと3年総額7500万ドルで契約したソニー・グレイは34歳、昨季はテキサス・レンジャーズの世界一に貢献したジョーダン・モンゴメリーは31歳と、30代の投手ばかりである。

 MLBでFA資格を得るには6年間のメジャー登録が必要であり、25歳でFA資格を手にするには20歳からメジャーでプレーしなければならない。

 高卒1年目の投手が活躍することが珍しくない日本球界とは異なり、選手層の厚い米球界では、高卒新人投手がメジャーで投げることがまず有り得ない。大卒の選手であっても、マイナーリーグで数年育てるのが普通であり、特に先発投手はその傾向が強い。となると、若くしてメジャーに昇格した投手であっても、FA権を得るのは20代後半であり、「25歳のFA先発投手」というのは、大谷の二刀流に次ぐ"ユニコーン"のような幻的な存在と言える。

 25歳はまだ成長過程であり、今後5年近くに渡ってさらなる成長が期待できる。これから選手としてのピーク時期を迎える選手を手に入れられるチャンスは、本当に稀である。

 第2の要因の「日本球界での圧倒的な実績」だが、これは山本本人の力による部分と、これまでの日本人投手がメジャーで築き上げてきた信頼と実績という2つの要素に分けられる。

 まず、本人の力の部分だが、日本球界で3年連続投手4冠&MVP&沢村賞と前人未到の記録を打ち立て、25歳にして誰もが認める日本球界ナンバーワン投手の座を勝ち取った。

 多彩な球種を操り、どの球種もMLBで平均以上との評価を得ているが、中でも絶賛されているのがスプリット。ドジャースの大先輩に当たる野茂英雄を筆頭に、フォーク系を武器にする日本人投手がメジャーで成功した例は数多くある。

 日本人投手はNPBで酷使される傾向が強いが、山本は165イニング以上を投げたシーズンが2021年と22年の2度だけ。独特の調整方法とフォームから肩や腕への負担も少なく、ケガのリスクも少ないと判断された。

 さらに国際試合にも強く、これまでにプレミア12(2019年)、東京五輪(2021年)、WBC(2023年)と侍ジャパンのメンバーに3度選ばれているが、その3大会全てで金メダル獲得に貢献した点も見逃せない。

 山本のように日本で圧倒的な成績を残してからMLBに挑戦した投手として、田中将大やダルビッシュ有の名前が挙がるが、彼らがメジャーで成功を収めてきたことも、山本の評価アップに繋がっている。田中やダルビッシュの働きによって、「日本で圧倒的な成績を残してきた投手はメジャーでも1年目から活躍できる」と信じられている。

 何よりも、昨季の千賀滉大の活躍が、今オフの山本株の大幅アップの要因となった。

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