吉田正尚がスランプに陥った時の態度を、レッドソックス首脳陣が絶賛「彼は何かを変えることを嫌がらない」 (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by スポニチ/アフロ

 そこで吉田が、打撃コーチ陣とともに必要なアジャストメントを行ない、復調につなげたことはさまざまな形で伝えられている。

 具体的には、打撃の際に身体を内側にねじりすぎてインサイドの球が見えづらくなっていたため、アシスタント打撃コーチのルイス・オルティスからの進言で、軽いオープンスタンスに変更。これによって、ボールを両目で見ることが可能になり、インサイドのボールがより見えやすくなった。速球をしっかりと懐近くまで待てるようになって、フィールドの全方向に強い打球が飛ばせるようになった。

 4月19日に1日の休養日を挟み、適切な修正をした吉田は好調期間に突入する。なかでも23日のミルウォーキー ・ブリュワーズ戦では、1イニング2本塁打と大爆発。その後も、5月9日まで16試合連続安打と打ちまくり、メジャー全体に名前を知らしめた。

「小さな調整で、いいフィードバックを得ることができた。引っ張る力に加え、逆方向にも強くボールを打てれば打撃方向の範囲が広がる。それは彼にとっても、私たちにとってもとても重要なことだ」

 レッドソックスのピーター・ファッシ打撃コーチはそう振り返ったが、実際に吉田とコーチ陣がやり遂げたのは、一見するとシンプルなことに見える。ただ、世界最高レベルのMLBで、しかも日本で実績を積み重ねてきた選手が打法を変えるのは、それほど簡単なことではないはずだ。

 松井秀喜をはじめ、多くの日本人打者が経験してきたのと同じように、吉田も速球やメジャー特有の動くボールに苦戦することは予想されていた。しかしサプライズだったのは、これほど早く適応の術を見つけ、結果を出したこと。その過程で、吉田は多くのことを証明したように思える。

「スランプに陥っていた時も、吉田の姿勢、態度、表情はこれまでとまったく変わらなかった。彼はアジャストメントのために何かを変えることを嫌がらず、恐れないことを示してくれた」

 チーム編成責任者であるブルーム氏の言葉どおり、取材する側から見ても、吉田のゲームに臨む態度は好不調を問わずほとんど変わらなかった。そして、新しい環境で貪欲に向上を求める姿勢も、キャンプ中から同様である。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る