大谷翔平の肉体は「別次元の宇宙人」「スポーツ科学の常識からは考えられない」 筋肉のプロ・谷本道哉も驚く「二刀流ならではの体型」とは
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が大いに盛り上がっている。
ひときわ話題になっているのが、「侍ジャパン」の大谷翔平だ。日本が4戦全勝した1次ラウンドの大谷は打率5割、1本塁打、8打点の大暴れ。投げては初戦の中国戦で4回無失点5奪三振を記録し、WBC公式ツイッターで1次ラウンドプールBのMVPに選出された。
そんな活躍とともに、ちまたで話題になっているのがヒーロー漫画の主人公さながらの肉体美。大谷の筋肉は何がすごいのか? あの筋肉が好成績を生むのだろうか?
NHK番組『みんなで筋肉体操』でお馴染み、順天堂大学スポーツ健康科学部先任准教授の谷本道哉さんに"筋肉のプロ"目線で大谷について語ってもらった。
3月上旬、WBC日本代表チームに合流し練習をする大谷翔平この記事に関連する写真を見る◆ ◆ ◆
●二刀流の鍛え方が生む「大谷体型」
"カッコいい肉体"の定義はさまざまだろうが、一般的にジム通いで多くの人が目指すのが、水泳選手やボディビルダーのような逆三角形の体型。しかし、大谷の身体はこうしたシルエットとはまったく異なるという。谷本さんが解説する。
「見栄えする体づくりにおいて、普通あまり鍛えないのが、みぞおちからお尻までの間。このあたりに筋肉をつけると寸胴体型になってしまうと避ける人が多いのです。
しかし野球は、投げるにしても、打つにしても、ひねる動作がとても大切なスポーツ。この回転力を高めるには脇腹の腹斜筋、そして骨盤を回すお尻の大殿筋、内ももの内転筋も必要になってきます。
大谷選手はとりわけ腰回りがガッシリしているのが大きな特徴ですね」
大谷の筋肉について解説してくれた谷本道哉さん 写真/本人提供この記事に関連する写真を見る だが、大谷はいわゆる寸胴体型に見えない。それは、速球投手であるだけでなく、長距離砲スラッガーとしての、二刀流ならではの上半身の鍛え方にあるという。
「身体が生み出すパワーは筋肉の大きさ、体積に比例します。そのためホームランバッターは、重たいバットを振るには腕の太さも含めて大胸筋、広背筋といった上半身の上部の筋肉も発達しています。その分寸胴は目立たなくなります。
一方で、ピッチャーはボールを速く投げるために、上半身では大胸筋、広背筋が厚くなりますが、腕の太さはそれほど必要ありません。
たとえば、巨人の右投げの畠世周投手は、広背筋の厚みを測ると、右が左の約1.5倍、断面積にすると2倍程度もある。投げることに特化したトレーニングを積むとそれくらい背中の筋肉が発達するんです」
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著者プロフィール
小林 悟 (こばやし・さとる)
フリーライター。1981年、福井県生まれ。週刊誌『サンデー毎日』(毎日新聞出版)、『週刊文春』(文藝春秋)、『集英社オンライン』(集英社)などで食や暮らし、スポーツにまつわる話題を中心に執筆。