藤浪晋太郎「メジャー1年目」最高のシナリオ...先発ローテ入り→トレード移籍→ポストシーズン進出→ワールドシリーズ優勝? (3ページ目)

  • 宇根夏樹●取材・文 text by Une Natsuki
  • photo by Kyodo News

【今夏トレードのウルトラC】

 藤浪の最大のセールス・ポイントは「奪三振」にある。2014〜16年は3年連続160イニング以上&奪三振率9.35以上。直近3年の計27先発も152.0イニングで奪三振率9.30を記録している。

 それと同時に「与四球率」も高い。2014〜16年はどのシーズンも3.50を超え、直近3年は4.56だ。ただ、昨年の10先発に限ると2.91だ。

 この与四球率の低下が本物なら、打者を歩かせて自滅することなく、快速球とスプリッターを投げ込み、奪三振の山を築いてもおかしくない。アスレチックスは、そう見ているのではないだろうか。リーグ平均からすると、藤浪の奪三振率は上昇もあり得る。昨年、セ・リーグの投手全体の奪三振率は7.18、ア・リーグは8.42だった。

 アスレチックスの読みが当たり、藤浪がシーズン序盤から好投した場合は、次のシナリオが現実味を帯びてくる。夏のトレードだ。

 シーズンが終わると、藤浪はFAになる。ほかの球団なら、まだ20代の先発投手を引き留めようとするだろうが、アスレチックスにそんな資金はない。戦力的にもオールスターを迎える前にはペナントレースから脱落しているはずなので、藤浪に限らず夏のトレード市場で主力を売りに出し、交換に有望な若手を得ようとするに違いない。

"わらしべ長者"ではないものの、アスレチックスが藤浪と契約を交わしたのは、若手獲得の布石と見ることもできる。単に金銭を差し出しても、若手を譲る球団はない。だが、目の前のポストシーズン進出に向け、ローテーション(あるいは他のポジション)に補充や底上げが必要な状況になれば、球団はその代価として若手を手放す。

 トレードがあるかもしれないことは、藤浪も、代理人のスコット・ボラスから聞いているに違いない。

 懐疑的な評価もあったなかで、藤浪は再建中のアスレチックスに入団し、先発投手として投げるチャンスを得た。そこで結果を残せば、夏のトレードにより、ポストシーズン出場にとどまらず、ワールドシリーズ優勝の可能性も出てくる。

 悪いシナリオではないどころか、メジャー1年目から最高のシナリオにもなり得る。どれだけ活躍しても、ポストシーズンの舞台に立てるとは限らないことは、大谷が示しているとおりだ。

プロフィール

  • 宇根夏樹

    宇根夏樹 (うね・なつき)

    ベースボール・ライター。1968年8月14日生まれ。三重県出身。MLB専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランス。著書『MLB人類学──名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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