「被害者」は大谷翔平だけじゃない。イチローにもあったMLBジャッジとの戦い (4ページ目)

  • 澤良憲●取材・文 text by Sawa Yoshinori
  • photo by AP/AFLO

 2009年9月26日、敵地トロント・ブルージェイズ戦での出来事である。当時マリナーズに所属していたイチローが第3打席目に行なった球審へのアピールが侮辱行為ととられ、人生初の退場処分を受けている。

 カウント0−2と追い込まれたイチローは、外角への3球目を見送った。ところが、球審はストライクと判定。滅多に感情を表に出さないイチローが珍しく怒りを露わにし、バットでボールが通過した線を地面に引き示した。のちに流されたリプレーで、ストライクと判定されたそのボールはイチローが引いた線上を通っていた。イチローが正しかったことになるが、「審判の判定は絶対」というメジャーリーグからすると、イチローは「やってはいけない行為」をしてしまった。

 大谷はこれまで一度も退場処分を受けたことがないが、先述のダイヤモンドバックス戦(11日)では、ボークの判定に対して首を大きく前に出し、「なぜ?」とアピールした。現地メディアは大谷のリアクションを面白がって好意的に見ていたが、大げさなアピール行為は一歩間違えれば退場処分を受ける可能性もある。

 もっとも、大谷の審判に対する普段の態度は"極めて紳士的"として有名で、その心配は杞憂に終わるかもしれない。例えば6月21日から始まったイニング間の粘着物検査で、23日に初めて検査を受けた大谷は、笑顔でグローブと帽子を審判に渡し敬意を示した。この大谷の姿勢に現地メディアは「パーフェクトな対応だ」と大絶賛している。

 このように「模範的選手」とも呼ばれている大谷が、今後も今まで通りの紳士的なプレーをし続ければ、必ずや正しい判定が下されることになると信じたい。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る