秋山翔吾のドラフト秘話。衝撃のホームランと家族の絆のエピソード (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Kyodo News

 秋山と同じ右投左打の俊足外野手。同じようなタイプの選手をふたり指名することは、まずありえない。スタッフの間に絶望的なムードが漂い始めたその時だった。

「第3回選択希望選手、埼玉西武、秋山翔吾、22歳、外野手、八戸大学」

 ドラフト会場の音声がスタジオに流れ、秋山のお母さんと妹が「うゎー!」と叫んで抱き合った映像が画面に映し出された時、セット裏のスタッフたちも「よかった!」と抱き合い、涙を流していた。あの時、番組で取り上げた選手はほかにもいたのに、どうして秋山の指名の瞬間だけ、みんなあれほど喜んだのか。

 秋山は小学生の時に父を病気で亡くし、以来、3人の子どもを育て上げた母の骨折りに心を重ねた者もいただろう。そしてなにより、ひたむきに、一途に自らを鍛え上げ、とうとうプロの世界へたどり着いた実直な青年のことを、みんなが愛していた。

 あの時のスタッフと顔を合わせると、今でもあの日の「秋山翔吾と家族」の話になる。

 今季からMLBのシンシナティ・レッズでプレーすることになるが、あの技術力と向上心があれば、絶対に成功するはずだ。

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