13年370億円。ブライス・ハーパーは
過大評価の声を覆せるか
「審判がどれだけひどかろうと、彼にはライトを守ってもらう必要があった。打席にも立ってもらう必要があったのに、そこにはいなかった。痛かったよ」
現地時間4月22日にニューヨークで行なわれた、地元のニューヨーク・メッツとフィラデルフィア・フィリーズの試合後に、1-5で敗れたフィリーズの先発投手、ジェイク・アリエッタがそう述べると、取り囲んでいた記者たちは思わず息を飲んだ。
アリエッタが口にした「彼」とは、昨オフにフィリーズに移籍し、チームの看板になったブライス・ハーパーのこと。アメリカのプロスポーツの選手が、味方のプレーヤーに関して批判的なコメントを残すことは滅多にない。"メディアの見えないところで"というのが不文律であり、とくに、槍玉に挙げられたのがスーパースターだったことが、クラブハウスでアリエッタを取り囲んだ記者たちを驚かせたのだ。
今オフにフィリーズと大型契約を結んだハーパー この日の4回の攻撃中、三振に倒れたハーパーは審判への激しい抗議で退場を告げられた。メジャー8年目にして12度目の退場処分。マット・ケンプ(シンシナティ・レッズ)の14度に次ぐ現役2位の多さで、34歳のケンプは試合出場数が約750戦も多いため、"退場率"ではハーパーがはるかに上という見方もできる。
気性の激しいハーパーを"熱血漢"と呼べば聞こえはいいが、アリエッタの言葉どおり、主力選手が試合中にいなくなればチームにとって大ダメージになる。22日の試合で退場の原因になった、ハーパーが見逃した球は明らかにストライクだった。正直、単に三振のフラストレーションを審判にぶつけているようにも見えた。
こんな姿を見て、フィリーズのファン、関係者は少なからず不安な気持ちになったのではないか。ハーパーはとてつもない才能と不安定さが同居したスラッガー。「諸刃の剣」とも言えるスーパースターは、今季から13年もの長きにわたってフィラデルフィアでプレーし続けるのだ。
2009年、16歳にしてアメリカの人気スポーツ誌『Sports Illustrated』の表紙を飾ったハーパーは、一見するとそれ以降も順調に階段を上がっていったように見える。2010年のドラフト全体1位でワシントン・ナショナルズに入団すると、2012年に新人王を獲得。2015年には打率.330、42本塁打という見事な成績でナ・リーグMVPにも輝いた。
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