2019.05.12

1イニング先発は吉と出るか。
菊池雄星の起用法を田中将大も後押し

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by getty Images

 堂々のニューヨーク・デビューだった。

 現地時間5月8日、ヤンキースタジアムでのニューヨーク・ヤンキース戦で先発したシアトル・マリナーズの左腕、菊池雄星の投球はあまりにも見事だった。故障者が続出しながら、この日まで21勝14敗の好成績を残していたヤンキースの打線を、6回ワンアウトまで無安打に封じる快投。結局はメジャー自己最長となる7回2/3を3安打1失点に抑え、2勝目をマークした。

「ここを中心として野球の歴史が作られていったという雰囲気を感じました。そこでいい勝ち方ができましたし、ヤンキースに投げるのをすごく楽しみにしていたので、本当にいい試合になったと思います」

8日のヤンキース戦で今季2勝目を挙げた菊池 高校時代から憧れていたというニューヨークのマウンドだが、菊池本人の言葉からも伝わってくる通り、必要以上の気負いや力みは感じられなかった。初回の先頭打者こそ四球で歩かせたものの、その後は16打者連続で凡退。スライダー、カーブを効果的に使い、伝統あるチームの打者たちを手玉にとっていった。

 試合後は、ヤンキースのクラブハウスもほとんど”あきらめムード”だった。アーロン・ブーン監督が「今夜は彼に打ち負かされてしまった」と完敗を認めれば、ベテランのキャメロン・メイビンも「時に脱帽し、相手投手をほめなければいけないときがある」とあっさり。ゲーム途中に降って湧いた”松ヤニ使用疑惑”に一部のファンは騒いだが、滑り止めの使用はメジャーではよくあることで、当のヤンキース選手たちは気にもしていなかった。

 必然的に注目度も高くなるヤンキース戦で、いきなりこれだけの投球で魅せたことの意味は大きい。アメリカ人にも発音しやすい”ユーセイ”のブロードウェイ初登場は、間違いなく大成功だったと言っていいだろう。

 この日の菊池のピッチングに感心したのは、ニューヨークのスポーツファン、ヤンキースの選手たちだけではない。メジャー某チームのスカウトに感想を尋ねても、背番号18の力量は事前のレポート以上だったという。