ケガをしても二刀流。大谷翔平が
メジャー1カ月で見せた前人未到の世界 (2ページ目)
評判は東海岸にまで轟き、ブーン監督のコメントにもあった"Good for Baseball(大谷の出現は野球界にとっていいこと)"という表現が頻繁に使われる。ポジションの概念を打ち破ったNBAのレブロン・ジェームズ、何事もなかったかのように階級を飛び越えたボクシングのマニー・パッキャオのように、大谷は業界の常識を叩き壊す革命児である。
前述した4月27日の一発は、エンゼルス・スタジアムの右翼にある記者席の前を高速で通過していった。その打球の速さと迫力に筆者も度肝を抜かれ、瞬間的に言葉を失った。エンゼルスの背番号17はやはりとてつもない素材。見ている者に「来てよかった」と感じさせるという意味で、今どき数少なくなった"カネが取れる選手"でもあるのだろう。
ただ、多くのファンのお目当てであったはずの大谷は、29日まで行なわれたヤンキースとのシリーズ2、3戦目には出場しなかった。27日にホームランを打った次の打席で二塁ゴロを打ち、ファーストベースを駆け抜けた際に左足首を捻挫。途中交代を余儀なくされ、日本のファンが楽しみにしていた28日の先発・田中将大とのメジャー初対決も実現しなかった。
結局、5月1日のオリオールズ戦でも、予定されていた先発登板を回避してDHとしてスタメン復帰。大谷シフトを破るレフトへの二塁打を放ち、今週末のマリナーズとのシリーズでは登板が可能になりそうとのことだが、ここまでの働きが華やかだっただけに離脱時のニュースも大きく報道されることになった。
「翔平のように振れている選手が打線に名を連ねられないのは、少し残念ではある。ただ、これがメジャーリーグの現実。そういうものなんだ。まだシーズンは長い。選手たちには常に健康でいてほしいが、休みを与えなければいけないときがある」
28日にマイク・ソーシア監督がそう語っていたように、162試合という長いシーズンでは故障はつきもの。今回のケガはプレー中の流れのなかで起こったもので、仕方ない。ただ、このようなことが起こる可能性が他の選手より高く、故障発生時にチームに与えるダメージも大きいことが、"二刀流"のリスクのひとつなのだろう。
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