日米150勝に王手の田中将大。ケガの功名で秋のヒーローになるか (3ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

 田中が積み重ねてきたものは、こうした素晴らしい個人記録となって表れ始めている。ただ、彼が戦場とするニューヨークの人々は、このような記録や数字に興味はない。ファンにとって大事なのは、エース役を務めるはずだった右腕が、9月を迎えてようやく今季最高と思えるピッチングを見せていることだ。どんなレコードよりも、現在の活躍にニューヨーカーはエキサイトしているはずである。

 5〜6月の田中は0勝6敗、防御率8.91という極度の不振に苦しみ、少なからずファンやメディアからの批判も受けた。しかし、直近の12試合では6勝3敗、防御率2.77と安定。特に7月28日以降の6試合では、4勝1敗、防御率2.08、39イニングで40奪三振と"支配的"と言える投球を取り戻している。

 いつの間にか11勝10敗と勝利数が負けを上回り、防御率も4.54まで下がった。アップダウンの激しかったシーズンだが、シーズン終了時の成績はさらに見栄えのいいものになることは間違いない。そして、地区優勝やワイルドカード争いをするチームでさらに活躍すれば、田中に対するイメージもガラッと変わるだろう。

 2日のレッドソックス戦前日――。田中にレギュラーシーズン最後の1カ月の意気込みを聞くと、「特別に、やってやろうという気持ちが強いわけではない」と断った上で、こんな言葉が返ってきた。

「シーズン序盤にあれだけ不安定な投球をしてきた中で、いろいろとトライし、修正を重ねてきた。(ここから)チームに貢献したいという想いはある」

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