エリートが極貧生活の末につかむ、メジャーリーグのGMという夢の仕事 (2ページ目)

  • 杉浦透●文 text by Sugiura Toru
  • photo by Getty Images

 近年のMLBのGMは、高学歴で年齢が若く、野球経験のない人材が多くなっている。メジャー30球団のうち、30代から40代のGMが過半数を占め、アイビーリーグ(ハーバード大学、コロンビア大学など、アメリカ北東部の名門私立8大学の総称)出身者や、法科大学院、経営大学院を修了した者もいる。

 2000年代に入り、歴代最年少の28歳でGMとなったテキサス・レンジャーズのジョン・ダニエルズと前ボストン・レッドソックスのセオ・エプスタインも、それぞれアイビーリーグのコーネル大学とイェール大学出身で、ともに野球経験はない。日本以上ともいえるアメリカの学歴社会を、ここでも垣間見ることができる。

 これに対してチームの監督は、必ずしも高学歴ではなく、野球経験が豊富な年配の人物が多い。MLBでは、GMと監督の職務内容や適格条件が根本的に違うのだ。GMは、チームの総合力を客観的に分析する力、予算と戦力バランスを案分できるビジネスセンス、さらに、トレードやドラフトでの決断力と交渉力が不可欠。一方で監督は、経験に基づく戦術眼、選手の能力や人間性を見極める洞察力、チームを引っ張っていくリーダーシップが求められる。

 役職的に、若いGMが監督よりも上の立場で仕事をすることになるわけだが、MLBではそれに違和感があまりない。もちろん若いGMたちも年上の監督をリスペクトしており、信頼関係を構築したうえでのパートナーシップなのだが、年齢による上下関係が厳しい日本においては、同様の関係を築くことは簡単ではないだろう。

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