元メジャースカウトが語る「前田健太の成功のカギは岩隈流投球術」 (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

「とにかく低めです。岩隈がアメリカへ行ってすぐのときに『お前のスピードじゃ、少し高い、ちょっと甘いとはるかかなたに持っていかれるよ』と言ったことがあります。本人も自覚していて、『甘いと本当によく飛びます』と笑っていました。とにかく低めに徹底して集められることが重要です」

 メジャー移籍後の岩隈の投球を見ると、内野ゴロの多さが際立っている。低めに球を集めながら、ゴロを打たせるコツを覚えたことで球数も抑えられ、野手のリズムもよくなる効果も生んだ。さらに山本氏は、「低め」に加え、もうひとつのポイントとして「内角」を挙げた。

「メジャーは内角のジャッジが打者に甘い。だから、打者は思い切り踏み込んでくるし、リーチも長いから、(右打者の場合)外角の球でもレフトに引っ張って長打になるんです。そうさせないためにも、いかに内角を攻め、意識させるかが大事になってきます。ただ、腰から上にいくとすぐ乱闘になりますから、内角低めにピンポイントで投げ切れるコントロールが必要になります。岩隈はこのレベルの制球力を持っています。マエケン(前田健太)も外角低めに投げ切る技術は高いものがありますし、時折、内角をズバッと突く攻めもできる。そういう点ですごく楽しみですよね」

 今シーズン終了時、前田のこれまでの与四球率は1.90で、日本時代の岩隈を上回っている。ちなみに、ダルビッシュ有の日本での与四球率は2.36、田中将大は1.88。そのダルビッシュや田中に比べ、真っすぐの破壊力や変化球のキレでやや劣ると見られている前田だけに、より高い制球力が活躍の成否を分けることになるだろう。山本氏が続ける。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る