2014.12.16

秘話。ロイヤルズを救った42歳イバニエスのひと言

  • ブラッド・レフトン●文 text by Brad Lefton
  • photo by Getty Images

12月特集 アスリート、現役続行と引退の波間 (8)

 ワールドシリーズ第1戦のあと、1-7と完敗したロイヤルズの主砲、エリック・ホズマーは汚れたユニフォームを着たまま、ロッカーの前で大勢の記者に囲まれ質問を受けていた。チームが負けてしまったことだけでなく、自身4打数無安打で終わったことについても説明しなければいけなかった。なかでも二死満塁の好機で内野ゴロに打ち取られたことについて、次から次へと質問を浴びせられていた。

メジャー通算2034安打を記録したイバニエス

 ネガティブな質問が続き、ホズマーも動揺を隠せないでいたが、次の瞬間、その場の空気が魔法にかかったかのように変わった。隣のロッカーの主がシャワーから帰ってきたのだ。続いて、笑い声が聞こえ、歌声まで聞こえてきた。その主とは42歳の大ベテラン、ラウル・イバニエスだった。

 シーズン途中にロイヤルズに移籍してきたイバニエスのロッカーをチームの看板選手であるホズマーの隣にしたことは、決して偶然ではなかった。

 今シーズン、ロイヤルズは生きのいい有望な若手が揃っており、大きな期待を集めていた。イバニエスが移籍してくるまで32歳の青木宣親が野手の中でチーム最年長という若いチームだった。ただ、潜在能力の高い若手が揃っていたものの、経験ある選手が少なかったためか、なかなか結果を出せずにいた。それがイバニエスの加入によりチームは一変、選手たちは次々と才能を発揮し出したのだ。

 イバニエスは6月21日(現地時間)までエンゼルスでプレイしていたが、打率.157、ホームラン3本という結果で、シーズン途中の解雇となった。それから9日後、イバニエスの獲得に手を挙げたのがロイヤルズだった。イバニエス獲得のニュースは大きな話題にならなかったが、イバニエス自身、大きな期待と希望を持っていた。その理由をイバニエスは次のように語ってくれた。

「昨年の話になりますが、私がまだマリナーズにいた頃、ロイヤルズはいいチームになる、強いチームになると思っていました。2013年の春のキャンプの時からそんなことを思っていたのを覚えています。いい選手が揃っていて、本当に可能性を感じていました。最高のキャッチャーがいて、ファースト、サード、ショート、レフトと、どのポジションにも素晴らしい才能を持った選手が揃っている。敵として彼らを見ていて、近い将来、必ず才能を開花させるだろうと思っていました。だから私は、ロイヤルズと契約したんです。1985年以来の世界一を達成できるんじゃないかと。そのチームの一員になりたいという気持ちに駆られていました」