スタントンの大型契約でイチローの獲得競争が激化する!? (2ページ目)
ところが、今のメジャーを見ると、衰退どころか成長の一途をたどっている。そしてマリナーズもこの契約によって損害を受けることはなかった。ちなみに、この5年間(ヤンキースでの67試合を含む)のイチローは、2008年から3年連続シーズン200安打を達成するなど、1014本のヒットを放ち、打率.306をマーク。盗塁も180個を記録した。そして何より、大きなケガもなく793試合に出場したのだ。
マーリンズのオーナーであるジェフリー・ロリアは、今回のスタントンの契約について次のように説明した。
「このような強打者は、今の野球界でどこを探しても見つかりません。もし私たちがこのような契約をしなかったら、必ずどこかの球団が同じような契約をしたと思います」
現在、野球界にスラッガーがいなくなっているというロリアのコメントは、これからイチローの獲得競争が激しくなることを表しているような気がしてならない。
ロリアが語るように、いまメジャーでパワーが衰えていることは明らかだ。スタントンの37本塁打はナ・リーグ1位で、オリオールズのネルソン・クルーズの40本に次ぎメジャー2位の記録である。しかし、パワーの象徴とされる1シーズン50本塁打には遠く及んでいない。ここ4シーズンで50本塁打に達したのは、2013年のクリス・デービス(53本/オリオールズ)だけである。
またホームランの減少にともない、得点力も下がっている。2014年のメジャーの平均得点は4.07で、これは1981年以来最低の数字となっている。
もちろん、筋肉増強剤やステロイドの規制、ストライクゾーンの拡大など、得点力の低下には様々な要素がある。議論する余地はたくさんあると思うが、結果として低下しているという事実を無視することはできない。各チームとも攻撃力を必要としているが、ロリアが言うように、圧倒的な力を持ったスラッガーがいない。だからこそ、スラッガーに頼らない野球を実践することが必要となってきているのだ。
それを実践したのが、大躍進を遂げたロイヤルズであり、ここ5年間で3度の世界一に輝いたジャイアンツである。ロイヤルズはスピード、守備を基本にした"スモール・ベースボール"を強化することでチーム力を上げた。こうした戦いは、ずっと前からジャイアンツが実践してきたものだ。この2チームが今季、ワールドシリーズに進出したのもただの偶然ではあるまい。来季のチーム作りにおいて、こうしたことが考慮されることは間違いないだろう。
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