マネーボールはもう古い?低予算アスレチックスの新戦略

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by Getty Images

 一方、2007年にボストン・レッドソックスでデビューしたモスは、3チームを渡り歩くも、なかなか芽が出てこない選手でした。しかし2012年に28歳でアスレチックスに移籍すると、潜在能力が開花し、一昨年は21本塁打、そして昨年も30本塁打をマークしたのです。また、これまでダルビッシュ有投手から計4本塁打を記録しており、「ダルビッシュキラー」として有名になりました。

 そして今年、アスレチックスに加わったスコット・カズミアーも、見事に再生したひとりです。かつて、カズミアーはタンパベイ・レイズのエースとして活躍したものの、2012年シーズンはどの球団からも声がかからず、アメリカの独立リーグで投げていました。しかし昨年、クリーブランド・インディアンスで3年ぶりにメジャーで勝利を挙げ、そのオフにアスレチックスに移籍すると、現在7勝2敗・防御率2.20と抜群の成績を残し、30歳で再びエース格に舞い戻りました。

 このように、まだ実績のない若手や、他球団が興味を示さないベテランに着目し、「トレード」と「再生プロジェクト」によってチームを作り上げていくスタイルが、アスレチックスの強さの秘訣です。ひとえにこれは、ビリー・ビーンGMを筆頭に、他球団の選手まで綿密にスカウティングしているスタッフの努力の賜物でしょう。アスレチックスのスタッフは非常に優秀です。

 そしてもうひとつ、アスレチックスの強さを語る上で、欠かせないことがあります。それは今、アスレチックスが導入して一番話題となっている、「プラトーン戦術」です。相手ピッチャーによって選手を入れ替えるプラトーン戦術は、アメリカでは「新しいマネーボール」として注目されています。

 レギュラーの選手は毎試合出場するので、好成績を残した選手は自然と年俸が跳ね上がります。しかし、ひとつのポジションに複数の選手を置いて、相手によって交互に起用すると、選手の長所を伸ばすことが可能となり、なおかつ出場試合数が多くないので、年俸コストを抑えることもできるのです。

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